Alliance 同盟 (連載第434回)

 去る6月、ホルムズ海峡で日本企業のタンカーなど2隻が被弾(触雷?)炎上したのは何とも不可解な事件だった。米国はイランの革命防衛隊がタンカーから不発弾を除去しているとする映像を公開して同国を非難し、トランプ大統領は軍事攻撃寸前で思い止まったという。

 しかし、対米仲介を目的に日本の首相がイランの最高指導者を訪問している最中に当のイランが意図的に日本のタンカーを攻撃するとは、常識的には考えにくい。続報も無く、誰が何の目的でタンカーを攻撃したのかは今も謎だ。

 そのトランプ大統領は、G20で訪日する直前に(日本を含めて)どの国も(ホルムズ海峡を航行する)自国の船を自分で守るべきだ(All of these countries should be protecting their own ships)とツイッターに投稿して様々な憶測を呼んだ。さらに、同大統領が日米安全保障条約(Japan-U.S. Security Treaty)は不公平だと考えているとの情報が米誌にリークされて日本政府を慌てさせた。結局、米国政府から安保条約の破棄または見直しの要求は無く、訪日中の大統領との首脳会談でもそれには触れずじまいだったが、一歩間違えると日米の同盟関係にヒビを入れかねないところだった。

 この度のタンカー被弾に際しては、現地に展開する米軍は証拠映像を撮影しただけでタンカーを攻撃から守っていないし、自衛隊が防衛出動したわけでもないが、今後同海域で海上封鎖(blockade)が実施される事態に陥ったらこの国はどう対応すべきか。米軍が交戦状態(state of belligerency)に入ったとき、海賊対策ですでに現地に派遣されている海自の護衛艦は、米国政府から援軍の要請があっても中立を維持(remain neutral)できるのか。この国が事実上の空母(連載第432回「空母」参照)を配備した日には、その判断がますます難しくなるだろう。

 そう考えるなら、トランプ氏が示唆したように、そろそろ日米安保体制を見直しても良い時期に来ているのかもしれない。この国には外国との交戦権が無いという憲法上の大原則を米側に再確認してもらうと共に、米側が財政負担を問題視するのであれば、在日米軍基地の大胆な縮小を協議の俎上に載せるのもひとつの考え方だ。そういったことを丁々発止議論し合えてこそ、互いに信頼できる同盟関係というものではないか。

(『財界』2019年8月6日号掲載)


※掲載日:2019年8月27日
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