Aircraft carrier 空母 (連載第432回)

 米国の現職大統領として史上初めて海上自衛隊の護衛艦「かが」に乗艦したトランプ大統領は良好な日米同盟を称えながらこう述べた。Japan recently announced its intent to purchase 105 brand new, stealth F-35 fighter aircraft, the best in the world. This purchase would give Japan the largest fleet of F-35s of any of our allies.(日本は最近、世界最高のF-35新型ステルス戦闘機を105機購入する意向を発表した。この購入により日本は米国の同盟国中最多のF-35を擁することになろう。)こんなところでも具体的な数字を出して成果を誇るあたりはいかにも実業家出身の大統領らしい。

 日米両首脳が強固な同盟関係を誇示する演出の舞台となった「かが」はヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の2番艦だが、共にSTOVL(Short Take-Off and Vertical Landing=短距離離陸・垂直着陸)戦闘機F-35Bの運用が可能な事実上の航空母艦(空母, aircraft carrier)に改装(convert)する計画がある。

 軍事に疎い私のような一般人には護衛艦を空母化する意義がいまひとつ分かりにくい。従来のヘリコプター空母(helicopter carrier)なら災害救援に役立つという理由も成り立とうが、固定翼戦闘機(fixed-wing fighter aircraft)を発着させる空母を持つ理由にはならない。

 空母保有の是非を巡る議論を避けるための弥縫策か、多用途運用護衛艦という曖昧模糊とした艦種名が唱えられたこともあったが、その後とんと聞かない。諸外国の例を見ると、大型の空母(旧日本海軍で言う正規空母)に対し、比較的小型のそれは軽空母(light aircraft carrier)と呼ばれている。戦闘機の運用が可能な護衛艦はどう言い繕ったところで空母の一種だから、改装後のいずも型護衛艦はSTOVL/ヘリコプター搭載軽空母とでも称するのが明快で良いと思う。なお米海軍と海兵隊は一部の強襲揚陸艦(amphibious assault ship)に搭載するF-35B(通称「ライトニングU」)を増やして軽空母としての試験運用を始めたが、軍事専門家はそれをライトニング空母(Lightning carrier)という新語で呼んで区別している。

 事実上の空母をどう呼ぶかよりも重要なのは、その保有目的や意義を包み隠さず説明して国内外の理解を得ることだ。トランプ大統領がいみじくも言及したように、それに搭載する高価な戦闘機を買うことにより同盟国である米国との良好な関係が一層発展するという理由付けは、あながち的外れでもない。

(『財界』2019年7月9日号掲載)


※掲載日:2019年7月23日
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