Default settings 初期設定 (連載第429回)

 老朽化が目立つ自宅のガス給湯器を交換したところ、以前使っていたのと同等の機種を付けたはずなのに、操作盤上に何やら見たことの無いグラフや数字が表示されることに気付いた。取扱説明書によると、それで省エネ目標の日々の達成度が分かるらしい。ケチな私がガスを無駄遣いする心配は皆無なので(いわば大きなお世話だ)、これらを全てOFFにしたら、従前のすっきりした見やすい表示になった。

 マイコンを内蔵した今日のデジタル家電製品には、ユーザーの本来の使用目的を逸脱した各種の機能が搭載されている。工場出荷時の設定(factory settings)ではその一部がON=有効(enabled)になっているため、不要な機能をいちいちOFF=無効(disabled)にするのに余計な手間がかかる。

 昔のアナログ家電は簡単明瞭で良かった。ユーザーの目に見えない無用な機能の初期設定(default settings)を気にすることも無くすぐに使えた。

 一方、今時のIT家電と来たら、ものによっては取扱説明書さえ付いておらず、ヘルプを検索しても答が得られず、よくある質問と回答集(FAQ, frequently asked questions)をインターネットで探し回ってようやく対処方法が見つかる有様だ。自分で言うのもおこがましいが、かつて家電メーカーで、後に翻訳者として取扱説明書の編集や翻訳に携わったことがあるこの私でさえ煩わしく思うのだから、世間の中高年ユーザーには難儀している人も多いのではないか。

 もちろん、IT家電やアプリの中には、夥しい数の機能の設定をいちいち顧みなくても直感的に(intuitively)使えるようによくできているものも多い。しかし、インターネットに接続されるスマートフォンや次世代家電の場合は特に、ユーザーには不要な情報をネットから受信したり不用意に位置情報を発信したりするので、それと知らずに使っているユーザーの個人情報が漏洩し悪用され、思わぬ不利益や身の危険を招きかねない。昔は信用ある国内大手メーカーが製造していた家電製品も、近頃は得体の知れない会社が外国で作っているから油断できない。

 以上は守旧的な非スマホユーザーの杞憂かもしれないが、こういった潜在的な危険に対する予防対策の消費者への適切な情報提供を望みたい。

(『財界』2019年5月28日号掲載)


※掲載日:2019年5月29日
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