Imperial era name 元号 (連載第428回)

 先日更新したばかりの運転免許証に「平成36年○月×日まで有効」と書いてあるのを見て、日常生活ではもっぱら西暦年(the Christian year)を用いている私はちょっと辟易した。今年が平成何年だったかさえすぐに思い出せないのに、今度の改元によってますます分かりにくくなりそうだ。

 近頃はどの記入書式も西暦が標準で、元号表記を常用しているのはお役所くらいだ。そのせいか、元号が法制化された今日でもそれを好まない向きも一部にあるようだ。ただ聞くところによると、運転免許証については近々システムを改修してその後は西暦と元号が併記されるという。

 国または地域独自の暦年(calendar year)には、太陰暦であるイスラム暦(ヒジュラ暦)などがあるものの、世界的には少数派だ。仄聞によると、エチオピアの暦は同じキリスト生誕紀元でも西暦(グレゴリオ暦)とは数年の差があるらしい。台湾では建国年の1912年を元年とする民国紀元が西暦と併用されているが、中国大陸を含め中華圏の大部分は西暦を使っている。この国でも戦前は神武天皇が即位したといわれる年から数える皇紀というのがあって、1940(昭和15)年には紀元2600年を祝ったそうだが、私のような戦後世代は旧暦と同様、全く使ったことがない。

 手元の辞書には元号の英訳はimperial era nameとあるが、日本の文化慣習に疎い外国の人々には、これだけでは分かりにくいかもしれない。一世一元制が採用された明治以降については、the period of the [current] emperor's reign([今上]天皇の在位期間)などと説明調の訳を補うといい。

 私生活では元号を使わない私も、人生の後半に入った今、政治史や世相史に自分自身の歩みを重ねて振り返るにあたっては1世代(one generation)=約30年(three decades)程度の歳月の呼称があってもいいと思うようになった。西暦では、同程度の期間を、例えば20世紀最後の四半世紀(the last quarter of the 20th century)などと表現できるが、文脈によっては今一つ実感が伴わない。

 新元号の考案、選考にあたって関係者は由来や字義について千思万考されたことと察するが、そのうち誰もその意義など全く意識しないで使うように―または使わなく―なるだろう。何であれ名前とはそういうものだ。

(『財界』2019年5月14日号掲載)


※掲載日:2019年5月29日
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