Grounding 運航停止 (連載第427回)

 3月10日、エチオピア航空のボーイング737(B737) Max 8型機が首都アジスアベバ離陸直後に墜落し(crash)、乗員乗客157名が全員死亡するという痛ましい事故が発生した。昨年10月にも同型機がインドネシアで墜落事故を起こしていることから、欧州・アジア各国当局は相次いで同機種の運航停止命令(grounding order)を出した。耐空性(airworthiness)に問題無いとして最後まで運航を認めていた米国のFAA(Federal Aviation Agency, 連邦航空局)もその後これに追随した。

 墜落事故の第一報をツイッターで知ったのは日曜日の夜だったが、国内線にはまだ同機種が就航していないせいか、はたまた芸能人が麻薬使用で逮捕されたニュースの陰に隠れたか、ネットやテレビで見る限り国内では今一つ関心が低いようにも見える。

 B737は1960年代から生産・運航されてきたナローボディ(narrow-body, 狭胴型)機のロングセラーだが、私が記憶する限り日本国内では死亡事故は起きていない。私が帰省の際によく乗るのはB737でもNG(next generation)と呼ばれている一世代前の機種で、安全性に疑問を感じたことは全く無い。B737 Maxシリーズは最新型だけに、わずか5ヵ月で2回も発生した墜落事故が与えた衝撃は小さくない。

 事故原因の究明が待たれるが、世界の航空機の航行を常時追跡表示しているウェブサイトFlightradar24によると、墜落したエチオピア航空機は離陸直後の上昇速度が不安定だった(vertical speed was unstable after take-off)そうで、Maxシリーズで新たに採用された機体制御系の不具合が原因として取り沙汰されている。

 かつての航空事故報道ではパイロットによる人為ミス(human error)を真っ先に疑う向きがあったが、今日ではまず操縦や機体制御の多くを依存しているコンピューターシステムに疑問の目が向けられる。十年近く使い続けている自分のパソコンが今でも毎週のように修正プログラムをダウンロードして更新しているのを見るにつけても、人命の安全をコンピューターにのみ委ねるのは怖いと思う。航空機の複雑なシステムは当然パソコンのOSよりも厳重なチェックを経ているとは思うが、内在する危険を見抜いて事故を未然に防ぐ最後の砦はやはり熟練した人間の目であってほしい。

(『財界』2019年4月23日号掲載)


※掲載日:2019年4月23日
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