Fake review 偽レビュー (連載第414回)

 わが愛用の『ビジネス技術実用英語大辞典』(海野文男・海野和子共著)の増補改訂版(V6, CD-ROM版)が手に入ったので、ひさしぶりに某通販サイトにレビュー(review)を書いた。発売直後のせいかまだ誰も書いていなかった。一番乗りは気分がいい。私の評価は星五つ。

実を言うと、旧版との違いはよく分からないので、批評というよりは商品紹介に近いことを書いた。長年にわたって座右に置いて使ってきた辞書なので、多少ひいき目になるのは仕方が無い。

 私が育った時代は一般人が書いた商品レビューが他人に読まれる機会などほとんど無かった。せいぜいアンケート(questionnaire)葉書にユーザーとしての使用感(user experience)や苦情(complaint)を書いて送るだけで、その情報は顧客からのフィードバック(customer feedback)として製造元や販売元で内々に処理されるだけだ。ネット全盛の今日では、ユーザーがレビューの名の下に自分の意見や感想を価格情報サイトやオンライン販売サイトに書き込み、誰にでも読んでもらえるようになった。数多あるレビューの中にはその商品に対する絶賛もあれば、「買わないほうがいい」という酷評もある。

 よく問題になるのはレビューの真偽だ。私の場合、天地神明に誓ってレビューに嘘偽りや心にも無いことを書いたことは無い。ところが、世の中にはお金をもらって、自分が買っても使ってもいない商品のレビューを書く人がいるらしい。露店などで昔よくあったサクラだ。この問題については以前もここで言及した(単行本『英語で夢を見る楽しみ』所収「口コミ」pp.134-136参照)が、このような偽レビューには有効な対策が無いのか、ますます増える一方だ。内容に乏しく時には誤字(typo)だらけの五つ星レビュー(five-star review)ばかり並んでいたら、それは偽情報と疑ってかかったほうがいい。

 ただし、サクラまがいのレビューも、その内容がすべて虚偽(false)だとは限らない。偽レビューがついた某国製の安物でも、買ってみたら意外によく使えることもある。報酬をもらってテレビの通販番組に出ている芸能人にしても、彼らが笑顔を浮かべて勧めている商品を本当に良いと思っているかどうかまでは分からない。偽レビューも考えようによっては、一般人がそれと似たことをしているに過ぎない。

 他人の高評価や宣伝に欺かれないためには、情報の受け手側が批判的、懐疑的な目で見るしかない。

(『財界』2018年10月9日号掲載)


※掲載日:2018年10月23日
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