Obituary 訃報欄 (連載第412回)

 私も人生の後半に入って親戚や知人の訃報に接したり身内の葬儀に関わったりする機会が多くなった。気鬱だが、故人やご遺族のお気持ちに配慮してお見送りするように自分なりに努めている。

 弔電については以前もここに書いた(連載第317回「弔意」第383回「お悔やみカード」参照)。もうひとつ悩ましい問題は、香典や供花供物を送るかどうかだ。

 昨今は家族だけで葬儀を執り行う傾向がますます強まっているようで、北海道の私の身内もそうしている。東京で暮らしているとつい忘れがちだが、地方によっては新聞に「お悔やみ」と題する訃報欄(obituary)があって、予め葬儀社に断っておかないと無名の市民でも新聞に個人情報が載ってしまう。その結果、怪しげなセールスマンが家に押しかけてきたり、知らない方から香典や供花を送られたりして当惑しかねない。

 香典は日本独特の慣習といわれる。札幌の実家で葬儀社からもらった資料によると、北海道では香典はもともと互助的な意味が強く、会葬者にはその場で会葬返礼品(即返し)を持たせるだけで、いただいた香典の金額に応じてそれなりの香典返しを後日送ること(後返し)はしない。ところが転勤などで道外出身者が増えたせいか、近頃は内地(本州)のやり方に倣って香典返しを送る人が増えたという。

 自分の経験から言って、クリスチャンの方は香典を辞退されるか、受け取っても故人に縁のある社会事業に寄付する向きが強い。インターネットでハワイや北米の葬儀社が掲示している日系人の訃報を読むと、Koden and flowers are gratefully declined.(ご香典ご供花は拝辞します)といった断り書きが見える。In lieu of flowers, donations to 〜 would be greatly appreciated.(ご供花の代わりに〜に寄付していただければ幸甚です)という記述も多い。Flowers are welcomed.(ご供花は有り難く頂戴します)とあれば、葬儀日程に合わせて花を送ってもいいかもしれない。

 香典や供花供物については従前の慣習に拘らず、葬儀の形態やご遺族の意向を尊重すべきだ。むやみに差し上げると余計な気遣いを強要することになる。葬儀の後で逝去を知ってお悔やみの気持ちを伝えたいなら、金品を送るのは避け、故人と自分の関係を簡単に説明しながら、紋切り型ではない、心のこもった手紙でも差し上げるといい。返事は無用と書き添えておくとなお親切だ。

(『財界』2018年9月11日号掲載)


※掲載日:2018年9月25日
※このページの無断複写・転載は固くお断りします。
©Yoshifumi Urade 2018  All rights reserved.