Eruption 噴火 (連載第407回)

 ハワイ諸島(the Hawaiian Islands)最大のハワイ島(the Island of Hawaii, the Big Island)のキラウエア(Kilauea)火山で5月上旬に始まった噴火では、その東側に次々と生じる割れ目(fissure)から噴出する溶岩(lava)が住宅地を襲った。噴火開始から半月ほど経った時点で40棟ほどの住宅が損壊し、道路が随所で寸断されたほか、有毒な亜硫酸ガス(sulfuric dioxide gas)を含む火山ガス(volcanic gas)による健康被害の懸念もあって、被災地の住民は避難生活を余儀無くされている。

 この活火山(active volcano)の通常の活動は穏やかで、巨大なハレマウマウ火口(Halemaumau Crater)や溶岩が流れ落ちる海岸が織り成す独特の景観は同島の良い観光資源だ。個人的な話だが、私も新婚旅行で訪れたことがある。観光用のヘリコプターで上空から見下ろすと、真っ黒な溶岩を敷き詰めた大地の所々に空いた穴から赤い溶岩が覗き、他所では見られない奇観を呈していた。

 噴火に関する記事を読んでいたら、vog という見慣れない単語が出てきた。手元の辞書に出ていないのは、これがこの火山の周辺で起こる現象を指すハワイ独特の気象用語だからだ。smogという英語がsmoke(煙)+fog(霧)からできた造語だったことを思い出せば、この言葉はvolcano(火山)+smog(スモッグ)が語源だと察しがつく。米国地質調査所(USGS)のウェブサイトにはカッコ書きでvolcanic air pollution(火山性大気汚染)と書いてある。ヴォッグ(ヴォグ)と音訳しても見当がつかない人もいるから、火山スモッグという訳語を補っている例も多い。laze(レイズ)という単語も今回の噴火で初めて知った。こちらはlava haze を詰めた造語で、溶岩が海に流れ込む際に発生する塩酸ガス(hydrochloric acid gas)を含む煙霧を指す用語らしい。

 ハワイ神話ではキラウエア火山は女神ペレ(Pele)の化身とされる。火山周辺で見られる毛髪状の溶岩はペレの毛(Pele's hair)と呼ばれている。それも含めてこの火山の溶岩を持ち帰るとペレの怒りに触れる。

 火山活動は地震と同様、予測が極めて困難だ。経験則や火山性微動から噴火の可能性(probability of eruption)についてある程度は言えても、現在の科学では完全な予知(prediction)は不可能だ。今回のような火山活動を目の当たりにして改めて人知では計り知れない事象に対する畏怖の念を思い起こすべきだろう。

(『財界』2018年6月26日号掲載)


※掲載日:2018年6月26日
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