Bantering 戯れ言 (連載第395回)

 11月のとある日曜日、アジア歴訪中ハノイに滞在していたトランプ大統領が、またもや唐突に北朝鮮の指導者について意外な言葉をツイッターに投稿して話題を呼んだ。

 Why would Kim Jong-un insult me by calling me "old," when I would NEVER call him "short and fat?"(キム・ジョンウン[北朝鮮指導者] はなぜ私を「老いぼれ」と呼んで侮辱してきたのか。私は彼のことを「チビでデブ」などと決して言わないのに)。ここまではいつもの戯れ言かと思って読んでいたが、それに続く次の言葉はちょっと意外だった。Oh well, I try so hard to be his friend ―and maybe someday that will happen!(とにかく私は彼の友人になろうとこれほど努力している。もしかしたら本当にそうなる日が来るかもしれない)。このツイートの前段を公共放送のニュースでは「背が低い」「太っている」と言わないのに「年寄り」と言われたなどと品よく表現していたが、ネット配信のニュースの大勢は拙訳と同様に悪口っぽく訳していた(そうでないと原文の面白さが伝わってこない)。

 さてこのツイート、米朝対話に向けて何か進展があったことを示すものか、それとも単なる戯れ言か。いずれにせよ、思わせぶりな発言で世間の注目を集めるトランプ氏の術には(例によって賛否両論はあるにせよ)、いつもながら感心する。相手の身体的特徴をあげつらうのは決して上品なユーモアではないが、今回は別に挑発の意図も無いようで、むしろ陽気なアメリカ人の悪気のない軽口=バンタリング(bantering)と見るべきだ。ビジネスの世界で百戦錬磨のトランプ氏は、超大国アメリカを向こうに回して大立ち回りを演じてきた彼の国の若い指導者をrocket man(ロケットマン)と揶揄する一方でsmart(利口だ)と評するなど、高く買っている節さえある。

 わが恩師・村松増美先生(同時通訳者)は生前よく、隣国同士がバンタリングできてこそ親しい間柄の証しだと仰っていた。この辺はこの国やその隣国の不得手なところだ。たとえ隣人を差別または侮辱する意図はなくても、そのコンプレックスに触れるような戯れ言をうっかり口にすれば袋叩きにされかねない。今はいがみ合っている国同士も、将来は首脳同士がツイッターで相手のことを気軽に茶化し合えるような日が来ることを願ってやまない。

(『財界』2018年1月2日号掲載)


※掲載日:2017年12月18日
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