Locked and loaded 臨戦態勢にある (連載第389回)

 中長距離弾道弾(medium-to-long range ballistic missile)の試射を繰り返す北朝鮮の挑発に対して米国のトランプ大統領がツイッターで応酬したことがニュースになった。

 8月上旬にトランプ大統領が投稿したツイートを読むと、"[Our nuclear arsenal] is now far stronger and more powerful than ever before." ([米国の核兵器群は]今や史上最も強大かつ強力である)と誇示しながらも"Hopefully we will never have to use this power."(この力を使う必要に迫られないことを願っている)と述べている。その数日後のツイートにも "Military solutions are now fully in place, locked and loaded, should North Korea act unwisely."(北朝鮮が無分別な行動に出る万一の事態に備えて軍事的解決策の配備はすでに万全で臨戦態勢にある)に続いて "Hopefully Kim Jong Un will find another path!"(キム・ジョンウン [北朝鮮指導者]が別の道を見出すように願っている)とある。過激な挑発を止めようとしない北朝鮮に自重を求めるこれら一連のツイートは、トランプ氏の発言にしてはむしろ自制が効いているほうだ。

 このツイートに使われているlock and loadという表現はいかにも銃社会の米国らしい。手元の辞書には見当たらないが、もともとは銃弾の入ったカートリッジを銃にロックして弾を装填するという意味で、日本語に訳すと「装填完了」「弾込めよし」といったところだ。そこから転じて、銃砲とは関係のない文脈でも「準備完了」の意味で使われることがある。巷の説によると、この表現は米国映画『硫黄島の砂』(1949年製作)のジョン・ウェインの台詞から広まったという。当時はload and lock(装填してロックする)と語順が逆だったそうだが、これは新旧の銃の構造の違いによるものらしい。

 大統領が重大な声明をツイッターで発信することの是非を論じる向きがあるが(連載第375回「ツイート」参照)、北朝鮮の一挙手一投足に対して一国のトップがいちいちテレビカメラの前に立って「断固非難する」などとお決まりの文句を言うよりも効果的で手っ取り早いと私は思う。

 北朝鮮にしても国家の存亡をかけてまで戦端を開くつもりはないだろうが、悲惨な結果を招いた近代戦争の多くは偶発的な衝突や国の指導者の誤算から始まっている。装填された火器が使われないことを願うばかりだ。

(『財界』2017年9月19日号掲載)


※掲載日:2017年9月19日
※このページの無断複写・転載は固くお断りします。
©Yoshifumi Urade 2017  All rights reserved.