Business attire ビジネスウェア (連載第384回)

 夏は高温多湿となるこの国では「クールビズ」なる官製の造語を合言葉にした夏季の軽装化(summer dress down)が浸透してきた。エアコンの過度な使用は環境にも身体にも良くないから、その慣行自体は悪くはない。だがその衣替えを伝えるテレビニュースに派手なアロハシャツ(aloha shirt)を着て机に向かっている公務員の姿が映ると、私などは多少の違和感を覚える。

 巷間言われているように、ハワイのオフィスではよくアロハシャツを着ている。ただしハワイ通の家内に言わせると、ビジネスウェア(business attire)として着るアロハシャツはデザインも色合いも落ち着いたもので、リゾート地でよく見かけるものとは明らかに見た目が異なる。少なくとも窓口業務に当たる職員などは、相手に不快感を与えない程度に地味な服装を心がけるのが常識というものだ。

 一方、たとえばネットに掲載されているハワイの招待告知を読むと、よくcasual and aloha attire (普段着またはアロハウェアで)と書いてある。その場合は本当にカジュアルな服装で構わないのだろう。

 ドレスコード(服装規定)の解釈は、ちょっと頭を働かせれば自ずと明らかだ。分からなければ主催者に電話して尋ねるといい。結婚式や葬式の案内状に「平服でお越しください」と書いてあるからといって普段着(casual wear)で行けば周囲の失笑を買う。この場合の「平服」は正装(formal attire)や準正装(semi-formal attire)ではないという意味だ。男性なら上着にネクタイは欠かせない。ところが手元の国語辞典で「平服」を引くと、「普段着る服」とか「普段着」とある。これが誤解のもとかもしれない。

 こんなことを書いていたら、かつて勤めていた職場では背広の上着を脱いでワイシャツの上から薄手の制服を着ていたことを思い出した。某有名デザイナーに依頼して作られたその制服はちょっと垢抜けたデザインで、私のような一般従業員は、外国から顧客や要人が訪れても社内ではその格好で(ただし役員だけは背広に着替えて)応対していた。ところがある日、それを着たまま社外で食事を取ることを禁じる通達が総務部から出た。何でも、近隣の食堂で「作業着姿」の人が食事しているのは見苦しいという苦情が寄せられたというのが理由だったように記憶している。

 結局のところ、服装の適否は自分が所属する組織や社会の価値観に照らして判断するしかない。

(『財界』2017年7月4日号掲載)


※掲載日:2017年7月18日
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