Sympathy card お悔やみカード (連載第383回)

 インターネットで調べものをしていた私は偶然、ハワイ在住の家内の古い知人が最近亡くなったことに気付いた。さらにネットで検索したところ、現地の葬儀社が出している死亡記事(obituary)に故人の経歴と葬儀(funeral)や弔問(visitation)の日程が出ていたので、お悔やみを伝えたいかどうか家内に尋ねた。

 故人の家族だけで見送るいわゆる家族葬が増えたせいもあって、もともと人付き合いの少ない私は、誰かの訃報に接して香典や供花を送る機会が最近は滅多に無い。以前も書いたが、面識の無いご遺族に些少の金品でも送ることでお返しの気遣いをさせたくないこともある(連載第317回「弔意」参照)。無論、だからといって弔意(condolence, sympathy)を表すことを一切否定するものではない。

 私のそのような考えを知っている家内も最初、何もしない方針に傾いた。だが家内の話を改めて聞くと、生前の故人やその家族との交流が少なからずあったようなので、それならその思い出をひとこと書いたお悔やみカード(sympathy card)でも差し上げたらどうかと提案した。言い出しっぺの私もかねてより愛用の模範手紙文例集を片手に文面の作成を手伝った。

 ところが、家内の手持ちのグリーティングカードはどれも華やかなものばかりで、お悔やみに適した地味なデザインのものが手元に無い。香典袋ならそこらにあるが、香典の習慣が無い海外では無用だ。近所の店を覗いたがお悔やみ用のカードは見当たらない。ネットでいくつか見つけたものの、在庫が無くて時間がかかるという。電報やレタックス(国内専用)のサービスではお悔やみ用の台紙を多数取り揃えているのは知っていたが、台紙だけ買えないかと郵便局の窓口で尋ねたら案の定、言下に断られた。

 もちろん弔意を表すのに美麗なカードを添える必要は無いが、白紙に弔文だけというのもいささか物寂しい。結局、百貨店の文具売り場まで出向いて、百合の花のイラストが載ったお悔やみ用のカードを買ってきた。国内向けの小さな葉書サイズのものしかなかったが仕方が無い。文面をプリントするのに適当な色とサイズの用箋も買ったところ、結構な出費になった(それでも国際電報に比べたら微々たるものだ)。生前の故人と一緒に撮った写真を家内が探してそのコピーを添え、ようやくそれなりに見えるものに仕上がった。

(『財界』2017年6月20日号掲載)


※掲載日:2017年6月20日
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