Carry-on 機内持ち込み (連載第382回)

 出無精の私が久しぶりに飛行機に乗ろうとしたら、空港の手荷物預け入れカウンター(baggage check-in counter)が無人になっていて驚いた。横一列にずらりと並んだ自動手荷物預け機(automatic baggage drop-off machine)が乗客の置いた手荷物を黙々とさばいている。誰とも口をきかずに飛行機に乗れるのだから、寡黙な私にとっては喜ばしいことだ。

 手荷物(baggage, luggage)を預ける(check in)か機内に持ち込む(carry on)かは、私のように旅行に不慣れな人間をよく悩ませる。先日また米国の航空会社の機内で起こった乗客と乗務員のトラブルの映像が物議を醸した。ベビーカーを機内に持ち込もうとした母親を乗務員が手荒に扱い、それを見かねて抗議した乗客と口論になった。ベビーカーの持ち込みが禁止されているなら、それを見逃した地上職員の失態であって乗客に非は無い。

 機内持ち込み可能なサイズのバッグは英語で carry-on bag と言う。改めてネットで検索してみたところ、cabin-size(-approved, -friendly)bagなどとも言うようだ。日本語ではこの意味でキャリーバッグと言う人がいるが、英語では言わない。carrier bagならあるが、この言葉は買い物に使う手提げ袋の類を指すことが多い。

 一方、大きな箱型の旅行カバンをスーツケース(suitcase)と言う。私以上の中高年はかつてトランク(trunk)と呼んでいたものだ。私などはスーツケースと聞くと機内持ち込みできない大きなものを連想するが、英語のsuitcase には機内持ち込み可能な比較的小さなものも含まれる。

 キャリーバッグやスーツケースにはふつうキャスター(車輪)が付いている。その種のカバンを英語で何と言うか調べてみたところ、trolley bag, wheelie bag, wheeled bag, roller bagと様々だ。suitcase with wheelsとも言うが、〜with castersとはまず言わない。この意味でキャリーケースというカタカナ語を使う人もいるが、これも英語ではない。

 さて黙々と空港の保安検査場を通り抜けた私は、そこで某航空会社の社員に呼び止められた。何かと思って立ち止まると、マイレージカードを作れと言われた。別の航空会社を使っているから結構と断ったが、それでもポイントが貯まるなどと言ってしつこい。乗客への説明は搭乗に必要な話に限ってもらいたい。

(『財界』2017年6月6日号掲載)


※掲載日:2017年6月20日
※このページの無断複写・転載は固くお断りします。
©Yoshifumi Urade 2017  All rights reserved.