What's updated 更新部分 (連載第380回)

 実家のある札幌市ではこの4月で敬老パス(高齢者優待乗車証)が磁気カードから、都市部で広く普及している非接触型ICカード(contactless [smart] IC card)に切り替わる。生活の足をバスに頼っている母から、何がどう変わるのかよく分からない旨の相談を受けて札幌市のウェブサイトで調べた私は、結構複雑なその説明にちょっと辟易した。

 敬老パスの制度は地方自治体によって異なる。私のように異郷に住む者は説明をよく読まないと分からない。札幌市では、70歳以上の市民は1万円分のカードを7枚まで買えるが、買う枚数によって単価が異なり、1枚目、2・4・5枚目、3枚目、6・7枚目の順に高くなる。この難解な料金体系は変わらないが、使い捨て(disposable)の磁気カードが料金をチャージ(入金)して使う(rechargeable)ICカードに変わる。母に確認すると、ここまでは理解していた。だが以前の磁気カードが発行後1年限りで失効したのに対し、新しく導入されるICカードの残高は無期限で使えることは知らなかったようだ。

 札幌市の敬老パスは、首都圏で使われているPASMOやSuica、札幌ではSAPICAと呼ばれる市販のICカードとは使い勝手がかなり異なる。違いのひとつは札幌市内の郵便局でしかチャージできないことだ。つまり途中でカード残高が不足しても、地下鉄の駅やバスの車内ではチャージできない。また、札幌市の制度だから市外の交通機関では使えない。これで乗車できるのは市内を運行するバス会社と市営地下鉄・市電だけで、JR線は市内区間でも使用不可。そうと知った上で使わないと、乗り換え(transfer)の際などに戸惑いそうだ。

 後日、母に届いた敬老パスに同封されていた説明書を見せてもらった。ICカードの使い方はイラスト入りで分かりやすく説明されていたが、手続きの細かい部分などは、高齢者によっては周囲の手助けが無ければ理解するのが難しいかもしれない。

 私が実務文書を翻訳してよく感じることだが、どこが更新されたのか(what was updated)が分かるようにしておかないと、読み手にはまた一から全部読む手間をかけてしまう。これまで通り変わらない(remain unchanged)部分とは別に、更新内容や新規追加部分(what's new)だけを別表に書き出すなり、強調表示(highlight)するなりといった読み手への配慮が望まれる。

(『財界』2017年5月9日号掲載)


※掲載日:2017年5月23日
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