Tweet ツイート (連載第375回)

 "Don't be rude."(無礼な態度は慎め)―当選後初の記者会見に臨んだトランプ次期大統領(当時)は、米CNN記者の質問を遮ってこうなじった。"Your organization's terrible. You're fake news."(お前の会社はひどい。偽のニュースだ)。

 やることなすことすべて型破りな(unconventional)米国の新大統領は、選挙期間中に自分を支持しなかった米大手マスメディアに対してはなから喧嘩腰だ。だが見方によっては、あれもプロレスのマイクパフォーマンスのように、舞台慣れした彼独特の演出手法なのかもしれない。

 トランプ氏は当選後長らく記者会見を開かず、その間にツイッター(Twitter)で内外の大企業を批判しては雇用拡大の言質を引き出した。ツイッターで書ける140字以内のツイート(Tweet, つぶやき)では政策は語れないなどと批判を浴びたが、これも見方を変えれば、ひとこと投稿するだけで次々と政策を実現したのだから、これほど効率的なやり方はあるまい。選挙中から敵対的な報道を繰り返してきたマスメディアの記者会見を避けてツイッターで一方的に情報を発信してきたところに、彼とそのスタッフのしたたかな計算が垣間見える。

 私も遅まきながらトランプ氏のツイッターをフォロー(follow)してみた。フォローというのは自分のツイッター画面上に相手のツイートを表示させる操作で、雑誌でいえば定期購読のようなものだ。トランプ氏のフォロワー(購読者)数は現在2千万人強で、8年間大統領を務めたオバマ氏の約4分の1に過ぎない。ところが実は、ツイッターのフォロワー数はツイートの実際の閲覧数を正しく反映していない。フォローしていなくてもツイートは読めるし、逆にフォローしていてもツイッターに飽きて読んでいない人もいれば、そのツイートを表示しないように設定(mute)することもできる。専門用語でインプレッション(impression)と呼ばれるツイートの表示回数のデータもあるが、その数字はツイートした本人以外には見えない仕組みになっている。

 転載されたツイート(retweet)が拡散すれば、その閲覧数は膨大に増える。トランプ氏の場合、問題となるツイートは全世界で報道されるから、その影響力の大きさは計り知れない。今や為政者は、記者会見に臨むことなく自身の政策意思を世界中に示すことができる時代なのだ。マスメディアも、その時代認識に立って報道姿勢を変えていく必要がありそうだ。

(『財界』2017年2月21日号掲載)


※掲載日:2017年2月21日
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