Tune in 選局する (連載第369回)

 義母が生前入院したときに、退屈しのぎにと小さなラジオを病室に持ち込んだ私は、チューニングつまみを回してがっかりした。AM放送が受信できない。幸いFM放送は入ったので、それで我慢してもらうことにした。

 同じ問題は札幌の実家でも起こった。NHK第1放送以外はAM放送が聴けないと母がこぼすので、反対側の窓の外にラジオを出してみたら少しは入るが、室内ではまったくダメだった。

 受信機自体の性能が問題なのではない。高層ビルが林立する街中の病院も、札幌市郊外の山中にある実家のマンションも、AM放送は電波障害の影響を受けやすい。私が今も住む木造の一軒家では十分に受信できるので、そのことに気付かなかった。

 屋外にアンテナを出せば解決しそうだが、近頃のラジオはどれもアンテナ内蔵型で、外部アンテナ端子が付いている機種はほとんど無い。ネット経由でもラジオ放送を聴けるのは知っているが、実は私の家族の誰一人としてスマホを持っていない。

 例によって英語の話になるが、ラジオのダイヤルを回して放送周波数に同調させることを英語でtune in [to the radio frequency]という。昔は「チューニング(同調)する」「選局する」と言えば(特にラジオを組み立てたことがある男子なら)何のことか分かったが、スマホばかりいじっている最近の若い人には通じないかもしれない。

 なお、AM放送のAMは amplitude modulation(振幅変調)の略だ。よく「中波」とも言うが、あれは放送周波数帯域(日本では530〜1605 kHz)に由来する呼称で、昔のラジオはよくAMの代わりにその意味でMW(=medium wave)と表示してあった。FMは frequency modulation(周波数変調)の略で、VHF(very high frequency、超高周波=超短波、76〜90MHz)帯で放送するものを言う。

 さてラジオの難聴問題だが、放送局側の対策として、AM放送と同じ番組を90.1〜95MHz帯で同時に放送する「FM補完放送」(通称「ワイドFM」)が昨年〔2015年〕頃から各地で徐々に導入されている。かつてアナログテレビ放送の1〜3chの音声が受信できた108MHzまで受信できる(=ワイドバンド)FMラジオなら聴ける。

 単三電池(AA battery)で長時間使えるラジオは、災害発生時の停電中や電源が使えない場所で活躍する。イヤホンや予備電池と共に一家に一台は常備しておきたい。

(『財界』2016年11月15日号掲載)


※掲載日:2016年11月16日
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