Pay-as-you-go 使った分だけ払う (連載第368回)

 半年余り前〔2015年〕に電子書籍版が出た私の古い著書の印税(royalty)が初めて振り込まれてきた。上梓してからかれこれ十有余年が経っている上に、市中には安い古本も出回っているので内心あまり期待していなかっただけに、ご購入いただいた奇特な読者諸氏には感謝と敬意を表したい。

 とはいえ、その総額は微々たるものだ。千部単位で刷った部数に応じてまとまった印税が入った新書版とは違って、電子書籍版はダウンロード数(つまり実際に売れた数)を基準に支払われるからだ。

 このように「使った(買った)分だけ[そのつど]払う」という意味の英語の形容詞にpay-as-you-goがある。例えばpay-as-you-go fee structureは、電気やガスなどの料金請求でいう「従量制料金体系」のことだ。pay-as-you-use(使用に応じて払う)などとも言う。バスなどでpay-as-you-enterと言えば、運賃を乗車時に払うこと、つまり「運賃先払い」という意味だ。

 残高が減る一方の預金通帳を見ながら私は思った。やってもやらなくても安定した収入が保証された身分とは違って、今の私のようなフリーランスはもともと働いた分しか実入りがない。注文の待ち時間などのロスタイムは無報酬だ。本にしても、多少売れ残ろうと印税がもらえた古き良き時代はすでに去ったのだ。

 少しでも生活の足しになればと思い立った私は、ネットオークションで売れそうな物がないかと部屋を探し回った。だが、いざオークションサイトを見ると、同じような商品が二束三文の安値でもごろごろ売れ残っている。これは手間がかかるだけだと気付いて止めた。

 次に思い付いたのはネット広告だ。長年細々と続けてきた拙ブログ「なるほど!訳語発見」 は、辞書では見つけにくい英語の訳語を書き留めてきたのが評価されたか、毎日約一千件のアクセス(閲覧)がある。これを活用しない手はない。もちろんネット広告の世界でも、昨今は顧客が商品を購入するなどの成果に応じて報酬が支払われる広告(pay for performance advertising)が主流で、そう簡単には稼げないが、何もしないで手をこまねいているよりはいい。さっそく某通販サイトの広告プログラムへの参加を申し込んだ。商品画像入りの広告リンクをブログにぺたぺたと貼りつけたら、文字ばかりぎっしり詰まっていた無愛想な私のブログもいくらか見栄えがするようになった。これで少しはお金になるといいのだけど。

(『財界』2016年11月1日号掲載)


※掲載日:2016年11月16日
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