Election year 選挙の年 (連載第350回)

 今年〔2016年〕は米国で4年に一度の大統領選挙がある年(presidential election year)だ。所詮は他国の選挙なのに、長きにわたる党代表候補の選出過程からその動向が海を越えて伝わってくるのは、米国大統領が持つ影響力の大きさに加えて、候補者のテレビ討論会などで盛り上がるせいもあるだろう。

 今年2月から州ごとに行われる予備選挙(presidential primary)または党員集会(presidential caucus)により共和、民主両党の代表候補が絞られていく。制度上は一般市民でも大統領職に立候補(run for presidency)できることになっていて、第三党(third party)または無所属(independent)で選挙に臨む者もいるが、その大半は泡沫候補で、当選した例はない。

 レースに勝ち残って大統領候補の指名(nomination for presidential candidate)を受けた候補者は、本選挙に臨むにあたって副大統領候補(running mate)を指名する。上院議長(President of the Senate)を兼ねる副大統領(Vice President)は大統領に次ぐ要職だが、昔は特に、大統領が欠けた場合を除けばほぼ無用の閑職だったらしい。第二次世界大戦中にルーズベルト大統領の死去により大統領に昇格したトルーマン副大統領は、それまで原爆開発計画を知らされていなかったという。ただし近年では、ブッシュ(Jr.)前政権で「宰相型」と評されたチェイニー副大統領のような実力者も現れている。

 それでも、現職の副大統領という座は、次期大統領の地位を狙うのに必ずしも絶好の立場ではないようだ。現オバマ政権のバイデン副大統領は、今度の大統領選への立候補を早々と断念した。古くはアイゼンハワー政権のニクソン副大統領(後年大統領に当選)、ジョンソン政権のハンフリー副大統領、クリントン政権のゴア副大統領が本選挙で敗れている。

 米国の大統領は、形式的には国民が選んだ選挙人団が投票する間接選挙だが、実質的には国民による直接公選制だ。誰が国のトップに相応しいか市民がワイワイと楽しそうに論じている様子を見るにつけて、あちらの政治文化が少し羨ましくなる。あれなら、政治がもっと身近に思えるかもしれない。 

 本稿を書くまですっかり忘れていたが、今年は参議院議員選挙がある。選挙のたびにその存在意義が問われる参議院だが(単行本『英語で夢を見る楽しみ』pp.79-81「参議院」参照)、せめて政治参加のあり方を考え直す良い機会にしたいものだ。

(『財界』2016年2月9日号掲載)


※掲載日:2016年2月24日
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