Decade 10年 (連載第346回)

 洋の東西を問わず、10 年という期間は人が歴史的に時間の経過を考える上でひとつの区切りになっているようだ。日本語では「10年ひと昔」と言うし、英語には10年を表すdecade という単語がある。

 なんでも今年はSF映画 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(Back to the Future)シリーズ第2作で未来として描かれた2015年10月21日を迎えたとかで、その日が近づくにつれテレビ番組やインターネットでその話題が持ち上がっていた。ということは、あれから30年経った(three decades have passed)わけだ。その映画が公開された1985年といえば、私はまだ会社員に成り立ての頃で、当時発売されたばかりの8ミリビデオカメラやポータブルCDプレーヤーの輸出事務に忙殺されていた。

 折しも今年はミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』(The Sound of Music)の公開50周年に当たるそうで、その舞台となったオーストリアのザルツブルグはその映画ゆかりの地を訪ねる観光客でにぎわっているらしい。その映画に登場したナチスドイツが欧州を席巻した第二次世界大戦の終戦から70周年にも当たる今年は、あの忌まわしい大戦を振り返る機会も多かった。

 decade を手元の辞書で引くといずれも「10年[間]」としか出ていないが、1世紀の10分の1、つまり「〜0年代」の意味で使われていることがある。たとえばfor the rest of this decadeとあるのを「この10年の残り」などと訳すと、どの10年を指しているのか判然としない。それが現時点(2015年)で書かれたものなら「2010年代の終わりまでの間」つまり「2019年末まで」という意味だ。

 私以上の年代の人々が若かった時代を振り返る際にはよく「昭和40年代」などというが、これを英語に訳すにはちょっとした工夫が要る。そもそも昭和元年が西暦何年に当たるか知らない外国の人々にいきなり Showa 40'sと言ってもまず通じない。だからといって、in 1960's and 70's などと訳すと、期間に幅がありすぎる。そこでdecadeを使って、the decade from 1965 to 1974またはthe decade between 1965 and 1974(1965年から1974年までの10年)と訳すといい。

 同様に「平成20年代」ならthe decade from 2008 to 2017と言って言えないこともないが、私自身は昭和の終焉とともに西暦を使うようになったので、日本語にしても英語にしてもいまひとつしっくり来ない。昭和は遠くなりにけり。

(『財界』2015年12月8日号掲載)


※掲載日:2015年12月22日
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