Congratulations! おめでとう! (連載第345回)

 昨年に続いて今年も日本人がノーベル賞を受賞した。北里大学特別栄誉教授の大村智博士が「回虫寄生虫に起因する感染症の新規治療法に関する発見」("for their discoveries concerning a novel therapy against infections caused by roundworm parasites")でノーベル医学生理学賞(The Nobel Prize in Physiology or Medicine)、東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章博士が「ニュートリノ振動の発見によりニュートリノに質量があることを示した」("for the discovery of neutrino oscillations, which shows that neutrinos have mass")ことでノーベル物理学賞(The Nobel Prize in Physics)に輝いた。一国民として、両受賞者にお祝い申し上げたい(I would like to extend congratulations to the honorees)。

 科学の最先端にとんと疎い上に、このような栄誉を受けられる識者とはご縁のない私ごとき無名の輩はそもそもお祝いを申し上げる立場にはないと思いながら、全人類に普遍的な価値が認められたノーベル賞だけは別格として、この連載のほか自分のブログでもこのように祝意を表すことにしている。ノーベル財団のウェブサイトや日本語のニュースサイトを見て、日本人のどのような功績が称えられたかを確認しておくことで、人類の進歩とそれに対する日本人の貢献を実感する。また、この機会に関心を持つことで、ふだんはあまり接することのない自然科学分野の語彙を広げることもできる。

 一方、ノーベル文学賞(The Nobel Prize in Literature)は、発表の少し前から、今年こそは誰某が受賞しそうだと騒ぐ向きがこの国の一部にあったようだが、あれは少し無粋だと思う。受賞者の多くが謙虚に述べるように、特にノーベル賞の場合、その受賞は長年の努力や創意工夫のひとつの結果であって、それ自体が目標ではないと考えるからだ。特に人によって評価が様々に異なる文学作品なら、なおさらそうではないか。

 賞が大きなものであればあるほど、受賞者本人やその周囲はこれからが大変だ。お祝いの言葉や花などを贈ってくれた内外の膨大な数の人々を記録して後日お礼の手紙を出し、本人や同行者の授賞式への出席、さらにその後も続く祝賀行事などの準備に忙殺される。祝意を表明するにしても、あまり近くない立場にいるのなら、受賞者やその周囲の人々に余計な時間を取らせないように配慮してあげるのが親切というものだろう。

(『財界』2015年11月17日号掲載)


※掲載日:2015年11月17日
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