What brings you to Japan? 何しに日本へ? (連載第342回)

 テレビ東京の番組に『YOUは何しに日本へ?』というのがある。成田空港や関西空港に到着したばかりの外国人にマイクを向けて来日の理由を尋ね、面白そうならその場で本人の了解を取って同行取材する。中には古武道の修行に来た姉弟の一行や、先祖の出身地を探しに来た日系人(the Japanese diaspora)などもいて、はたしてどんな旅になるのかと気になり、つい見入ってしまう。

 この番組で日本人のディレクターが外国人に"Why did you come to Japan?"(なぜ日本に来たのですか)と質問する場面を見た私は当初、ちょっとした違和感を覚えた。テレビカメラとマイクを向けられたら言わずともテレビ番組の取材だとわかるとしても、到着早々、入国審査官でもない他人からこういう質問を受けたら、訝しく思われるかもしれない。

 この点についてインターネットで検索してみたら、"What brings you to Japan?"と言うほうが失礼にならないという意見を多数見かけた。それはそうだが、よく考えると、必ずしも表現だけの問題ではない。むしろ、見知らぬ人から唐突にプライベートな質問を受けた相手を当惑させないかどうかが気になる。逆に、質問の意図が相手に伝わっていれば、それほど失礼には当たらないと思う。

 昔読んだ英会話の教本には "Do you like Japanese food?"(和食は好きですか)と尋ねる場面が出てきたが、和食を食べたことがなさそうな外国人が唐突にそう聞かれても、答えに窮するだろう。一口に和食といっても色々ある。相手の好き嫌いを知りたいのなら、もっと質問を絞り込んで、たとえば"Would you like to try sashimi or raw fish?"(刺し身を食べてみますか?)などと聞いたほうがいい。

 外国からの来客を歓待する場合、無粋な私でも思いつくお決まりの観光名所(sightseeing spots)に案内しても、はたして本当に喜んでもらえるかどうかわからない。前述の番組で見ると、何はさておきアニメキャラクターグッズの専門店に行きたいという若者もいれば、自分の国にはないカプセルホテルに一度泊まってみたかったという好事家もいる。

 そう考えると、外国人の来日目的を予め尋ねておくのはいい考えだ。お仕着せの観光コースを連れて歩く前に、"Is there any place you would like to visit?"(どこか行ってみたいところはありますか)などと相手の希望を聞いてあげるのが親切というものだ。

(『財界』2015年10月6日号掲載)


※掲載日:2015年10月20日
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