Multicopter/Drone マルチコプター/ドローン (連載第336回)

 今年4月に首相官邸の屋上に落下しているのを発見された騒動をきっかけに、複数の回転翼(ローター)がついたこの種の無人飛行物体をテレビ局が一斉に「ドローン」というカタカナ語で呼ぶようになった。それ以前はたしか「無人航空機」とか「無人機」と漢語に訳すか、漢語訳を付して伝えることもあったが、このカタカナ語は今や単独でまかり通っている。

 英語のdrone はもちろんその類の小型無人機を指すこともあるが、そもそもこれは無人航空機全般を意味する言葉であって、かつてはUAV(unmanned aerial vehicle)という専門用語で呼ばれていたものだ。たとえば軍用の固定翼無人機もdroneの一種だ。

 その後も祭り会場などにも落下して世間を騒がせた小型のドローンは、複数の回転翼を持つその形状から「マルチコプター」(multicopter)とか「マルチローター」(multirotor)とも呼ばれている。よく見られる回転翼を4基備えたタイプは「クアッドコプター」(quadcopter)ともいう(quad-は「4つ」を意味する接頭辞)。インターネットで見ると、通販サイトなどでは「マルチコプター/ドローン」と併記されている例も多い。

 少し前まではドローンを「ラジコンヘリ」と呼んでいたのをテレビ番組で見た記憶があるが、昔からあるラジコン(無線操縦式)ヘリコプター(radio-controlled helicopter)とマルチコプター型のドローンとでは見るからに違う。GPSによる自律飛行も可能なドローンは単なる無線操縦機ではないから、それを「ラジコンヘリ」と呼ぶのは避けたほうが無難だ。

 さてドローンがわが家の庭に飛来した日には、私のように短気な小心者はただちに「領空侵犯」と見なして竹ぼうきでたたき落としかねない。いやその前に、飼い犬・猫軍団が鹵獲(ろかく)せんと飛びかかるだろう。屋上に落ちたドローンに2週間も気がつかなかった堅城のごとき首相官邸より、あんなものが降ってきたら穴が空きそうなわが陋屋を含む民家や人身への脅威のほうがずっと大きい。ドローンにプライバシーが侵害された住民と、大切な玩具を没収・破壊されたドローン所有者との間でトラブルが多発するおそれもある。

 東京都はいち早く都立公園・庭園でのドローン使用を禁止した。免許制または許可制を前提に、防災・防犯など公益目的の使用は除いて、住宅地や公共の場所での使用も全面的に禁止すべきだと思う。

(『財界』2015年7月7日号掲載)


※掲載日:2015年7月21日
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