Anchorman ニュースキャスター (連載第318回)

 このところ、ニュースキャスター(newscasterまたはanchorman [男性] /anchorwoman [女性])が司会を務めるテレビのニュース番組(news show)をあまり見なくなった。その理由を以下に述べる。

 とある晩にテレビで見かけた某局のニュース番組の冒頭で伝えられたニュースは、賽銭泥棒の事件だった。折しも西アフリカでエボラ出血熱が流行し始め、イラクで過激派の支配が拡大し、ウクライナで旅客機が撃墜され内戦が一向に止まないその最中に、この国の全国向けニュース番組でいの一番に伝えられたニュースが賽銭泥棒とは…。私は呆れてテレビの前を立った。もちろん、そのニュース番組でもその後に重要なニュースを伝えただろう。しかし、ニュース番組では本来、緊急性や重要性の高い話題から伝えるのが原則ではなかったか。

 この国のニュースショーの草分けは、私がまだ中学生だった1970年代前半に始まり、磯村尚徳氏が初代のキャスターを務めたNHKの『ニュースセンター9時』だった。アナウンサーが無表情でひたすら原稿を読む従来のニュースとは違って、笑顔を浮かべ、時には軽口をたたく放送記者出身の磯村氏のざっくばらんなスタイルが人気を呼び、私もよく見ていた。

 一方、今日のニュース番組はどこか焦点の定まらない、かったるい番組になってしまった。ニュースキャスターやコメンテーターの的外れな私見や感想を延々と聞かされた日には、もううんざりしてしまう。衛星放送で米国など海外の放送局のニュース番組を見ると、日本のそれよりもずっとてきぱきと伝えているようだ。

 幸い、インターネットのおかげで、昔とは違って今日ではテレビのニュースに依存しなくてもよくなった。私の場合、国内外の主要マスコミをツイッターのリストに入れて、短信が随時、タイムライン上に並ぶように設定してある。興味のあるニュースのリンクをクリックすると、ニュースサイトで詳報を読んだり、写真や映像を見たりできる。この方法でニュースを読むのに慣れると、テレビのニュース番組はまどろっこしくて見るに堪えない。

 もちろん、テレビのニュースにはそれなりの良さもある。報道するほどの重要性はなくても、心和む映像をニュースの合間に流すのはいい。だが、国民の関心が高い重要な話題を差し置いて、優先度の低いニュースをトップで流されると、その番組の編成担当は何も考えていないのか、それとも何か隠された意図があってそうしているのかと、つい勘ぐってしまう。

 思うに、ニュースキャスターがコメントを交えながらだらだらとニュースを伝えるあのスタイルは、すでに時代遅れなのかもしれない。

(『財界』2014年10月7日号掲載)


※掲載日:2014年10月21日
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