Gun control 銃規制 (連載第142回)

 〔2007年〕4月中旬に米国バージニア州の大学で発生した銃乱射事件は30名以上もの犠牲者を出し、全米を震撼させた。インターネットで検索してみると、Massacre at Virginia Tech(バージニア工科大学の大虐殺)という見出しとともにこの惨事を伝える記事が、ネット中を飛び交っている。

 何の恨みもない人々を無差別に銃殺した動機は常人には理解しがたいが、犯行声明を事前にビデオに録画して放送局に送りつけ、犯行後に自殺した点などに、中東の自爆テロリストとの精神的な共通性を指摘する見方もあるようだ。

 報道によると、1999年に発生したコロンバイン高校の銃乱射事件以来、米国では学校や職場での銃乱射事件が毎年のように起こっている。にもかかわらず、全面的な銃規制(gun control)はいまだに実施されていない。

 米国独特の社会的背景として、その憲法で保証されている「武器を所有・携帯する権利」(the right to keep and bear arms)がある。独立戦争や西部開拓時代の遺物なのだろうか。銃で武装した犯罪者から身を守るためには一般市民も銃を持って当然だとする考えが捨てきれない米国人は、いつまでも悪循環(vicious circle)から抜け出せないようだ。実際、今回の乱射事件の後でも、銃を買う人がさらに増えたという。

 有効な銃規制を阻んできた巨大な政治勢力が、有名な圧力団体の全米ライフル協会(the National Rifle Association, NRA)である。「銃は人を殺さない。人を殺すのは人だ」(Guns do not kill people. People kill people.)という理屈にもならない理屈をこねて、銃器メーカーの利益をかたくなに守り続けている。このような圧力団体が、銃規制に賛成する議員や大統領候補を片っ端から落選させてきたこともあって、米国では強力な銃規制の立法化が難しいようだ。

 一方、この事件とほぼ時を同じくして、厳しい銃規制があるはずのこの国でも、選挙運動中の長崎市長が銃撃されて亡くなるという痛ましい事件が発生した。このところ発砲事件が相次いで発生しているのを見ると、単に法律があるだけでは社会の安全が守れないという現実を思い知らされる。

 銃を不法に所持する個人や組織に対する徹底的な捜査や押収を含めて、実効性の高い対策が望まれる。

(『財界』2007年6月12日号掲載)

※掲載日:2007年6月13日/再掲載日:2015年1月26日
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