Charismatic candidate カリスマ性のある候補 (連載第140回)

 アメリカでいま〔2007年〕大統領の座に最も近い候補のひとりとして注目されているバラク・オバマ上院議員(Senator Barack Obama、民主党)のウェブサイト*を覗いてみた。

 同候補のプロフィールを紹介するビデオ("Meet Barack")の冒頭で、彼が"There is not a liberal America and a conservative America; there is the United States of America. There is not a black America and white America and Latino America and Asian America; there is the United States of America."(リベラルなアメリカも保守的なアメリカもない、あるのはアメリカ合衆国だ。黒人のアメリカも白人のアメリカもラテン系のアメリカもアジア系のアメリカもない、あるのはアメリカ合衆国だ)と対照法や反復法を使って米国人のアイデンティティーと団結心に訴えた場面を使うあたりは、さすがにうまい。

 重厚なBGMを流しながら、支持者のコメントや候補者の過去の写真をテンポよく切り替えていく5分余りのこの映像クリップは、選挙用のビデオというより、まるで映画の予告編でも見ているようだ。本人のカリスマ性もさることながら、このような映像を作れるところにも感心してしまう。比較するのも悪いが、どこかの国のどこかの政党の珍妙なテレビCMとは、天と地ほどの差がある。

 かつてのジョン・F・ケネディにもなぞらえられるほど演説上手といわれるオバマ候補は、そのケネディが大統領に就任した1961年に生まれた。大国の指導者にはいささか若すぎるようにも思われるが、その若さが持つ魅力もあるのだろう。

 いよいよ黒人奴隷の子孫がアメリカ合衆国の大統領になる日も近いのかと思って見ていたら、オバマ候補の実父はケニア出身で、母親は白人だという。その両親は彼が2歳のときに離婚(父親は後に死去)。再婚してインドネシアに移住した母親と暮らしていた彼はその後、米国の祖父母の家で育った。けっして恵まれた境遇にはなかった彼が、上院議員からさらに大統領を目指すところまで来ているのも、天賦のカリスマ性が物を言ったのかもしれない。

 カリスマ性のある候補が必ずしも良い指導者になるとは限らないが、同候補の将来に関心をもって見ていきたい。

* www.barackobama.com/

(『財界』2007年5月15日号掲載)

※掲載日:2007年5月20日/再掲載日:2015年1月25日
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