Fake 偽造された (連載第111回)

 昨年〔2005年〕暮に露見したいわゆる耐震強度偽装事件(quake-resistance data falsification scandal)は、大手商社の子会社によるDPF(diesel particulate filter、ディーゼル微粒子除去装置)データ捏造事件に続いて、物づくりにかけてこの国が培ってきた信頼と誇りをまたもや大きく揺るがす一大事件に発展した。

 国内外に配信される英文記事に、fake(偽造の/捏造する)だのfalsify(変造する、偽造する)といった単語が並んでいるのを見るのは、何とも哀しいものだ。改めて検索してみたところ、data falsification(データ偽造)のほかに、data fabricationという言葉も使われている。fabricationという英語は、「組み立て、製作」という意味で使われる限りは必ずしも悪い意味はないが、このように使うと、falsificationと同様に、人を欺こうとする悪意が含まれる。

 一方、お隣の韓国でも、ヒト受精卵からクローンES細胞を作ったとする大学教授の論文が虚偽であったことが判明し、国中が蜂の巣を突いたような騒ぎになっているらしい。

 建築士や大学教授のように、社会的地位が高いと思われる人や大企業の間にも詐欺行為(fraud)が頻発するとは、嫌な世の中になったものだ。今日、この国の企業の間でコンプライアンス(compliance 法令遵守)が強調されるのも、性悪説に立っていちいち人を疑わなければならない昨今の雰囲気がその背景にあるのだろうか。

 その原因を、正直や清廉を尊ぶ道徳心や倫理観の欠如に求めるのは簡単だ。だが、そういう問題は、今に始まったことでもあるまい。いつの世にも、私利私欲のために嘘を平気でつける人間は、少なからずいるものだ。

 実際、私が住む都内の古い一軒家には、作業服を来た怪しげな連中がやってきては、「近所で解体工事をしているのでネズミが出ます」だの「区から頼まれて下水の検査に来ました」だの「前にお買い求めになった羽根布団の…」だのと見え透いた嘘をつきながら何かしらを売りつけようとするので、いささか閉口している。

 この社会にはびこる様々なインチキ(fake)に騙されないようにするためには、見た目には美麗な営業用の資料に書いてある文言や写真を安易に信じるのではなく、相手の顔(face)をよく見ることだろう。昔からよく言うように、嘘つきの顔にはちゃんとそう書いてある。

(『財界』2006年2月14日号掲載)

※掲載日:2006年2月18日/再掲載日:2015年1月18日
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