Overrepresentation 過剰代表 (連載第105回)

 〔2005年〕9月11日に実施された総選挙では、小泉首相の率いる自民党が地滑り的勝利(landslide victory)を収めた。

 もっとも、選挙制度に少し知識のある人ならご存じのように、小選挙区制(single-seat constituency system)を中心とした選挙制度では、彼我の得票差が少し開いただけで一方の圧倒的勝利を引き起こしてしまう。

 たとえば、ある小選挙区において2人の候補の得票率が51:49と僅差だったとしても、その選挙区の議席獲得率は100:0だ。つまり、落選候補に投じられた49%は死票となる。

 実際、今回の小選挙区の全国合計を見ると、与党自民党の得票率が47.8%、野党第一党の民主党が36.4%であったのに対し、獲得議席の比率は前者が73.0%、後者が17.3%と大きく開いた。

 政党名で投票する比例代表区だけで見ると、あれほど大勝したように見える自民党の全国の得票率はわずか38.2%だ。仮にすべての議席が比例代表選挙で行われていれば、自民党の獲得議席数は過半数を大きく割り込む。

 加えて、大都市と地方との間の一票の重さに大きな開きがあるなど、現行の選挙制度には問題が多い。  過剰代表(overrepresentation)と呼ばれるこのような現象は、何もこの国に限ったことではない。米英圏に伝統的な小選挙区制を採用した国では似たような問題が起きる。

 二大政党制(two-party system)が民主主義国家の理想的な姿だと思いこんでいる人もいるようだが、それは主客転倒というものだ。小選挙区制の下で選挙が行われると、良くも悪くも必然的に二大政党化を促してしまうだけの話だ。死票が多くて民意をよく反映しないこの選挙制度は、もとより民主主義の理想とはかけ離れている。

 それなら、小選挙区と併用されている比例代表制(proportional representation system)は民主的かといえば、そうとも限らない。今回の選挙では、「どうしてあれが二大政党の候補なの?」と思わずクビをかしげたくなるような、そこらの兄ちゃんみたいな候補もいた。候補者選出の民主的な手続きが確立していなければ、比例代表制も民主主義の精神に適ったシステムとはいえない。

 選挙制度にこのような大きな欠陥がつきまとう以上、誰かの言葉にもあるように、民主主義は所詮、次善の政治形態の域を超えられない(Democracy is only the second best form of government.)かもしれない。

(『財界』2005年11月1日号掲載)

※掲載日:2005年11月17日/再掲載日:2015年1月15日
※このページの無断複写・転載は固くお断りします。
All rights reserved by Y. Urade.