The Diet 国会 (連載第76回)

 「議会」の英語名が国によって違うことを学生時代に知って、面白く感じたことがある。

 日本の国会の英語名は(the) Diet(以下、定冠詞省略)だが、英国などの議会はParliament、米国の議会はCongress と呼ばれている。辞書などによると、北欧諸国やかつてのプロシアなどの一部の国の議会はDietと呼ぶらしい。

 その呼び名はたぶん、議会制度の発祥や制度によっても異なるのだろう。日本語でもそうだ。戦前の日本にあったのは「帝国議会」である。「国会」というのは、戦後の日本国憲法の下で定着した名称だ。

 「国会」という意味の英語のDietは、Parliamentに比べるとかなりマイナーな言葉らしい。ためしに、Japanese Dietという言葉を検索エンジンのGoogleに入れてみたところ、「日本の国会」よりもむしろ「日本人の食生活」という意味で使われている用例のほうが目立つ。

 「議会」を表す言葉としてより普遍的な英語はParliamentだろう。日本の国会について伝える英文メディアの記事でも、よくその言葉を使っている。日本の「国会議員」は、正式な言い方をすればMember of the Dietとなるのだろうが、実際にはMP(Member of Parliament)という略語もよく使われている。

 英語を学ぶ側にしてみると、国によって異なる名称を覚えるのは面倒だ。しかし、言葉やその背景となる歴史や文化は、多様性があるからこそ面白い。

 先の〔2004年〕参議院議員選挙では、自民と民主の二大政党が議席の大多数を占めた。しかし、その傾向があたかも世界の趨勢であるかのように喧伝する声には、少し疑問を覚える。

 二大政党制の出現を促す小選挙区制は死に票が多く、民意を忠実に反映しない。価値観が著しく多様化している現代社会にあって、古色蒼然としたこのようなシステムを志向することが、はたして正しい選択なのだろうか。

 戦前のこの国にも、政友会と民政党による二大政党制の時代があったが、両者の泥仕合や政治腐敗が軍部の台頭を招く一因となった。その先例に鑑みても、二大政党制になったからといって、必ずしも民主主義にとって好ましい結果をもたらすとは限らない。

 先日の参議院議員選挙にも現れた極めて低い投票率はむしろ、ほとんど二つしか選択肢がない政党政治に対する有権者の失望を反映しているような気もする。

(『財界』2004年8月24日号掲載)

※掲載日:2004年9月18日/再掲載日:2015年1月8日
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