Electoral system 選挙制度 (連載第277回)

 総選挙があるたびに、かつての政治学徒として疑問を抱いてしまうのは、第一院である衆議院の議席の大半を小選挙区(single-member district/constituency)で選出する現行の選挙制度(electoral/election system)を導入したのは失敗ではなかったか、ということだ。

 小選挙区制の主唱者は、これで二大政党制(two-party system)による政権交代が実現すると期待しただろう。確かに政権交代は起こる。しかし、それによって成立した政権が必ずしも民意を忠実に反映していない。かねてから指摘されているように、小選挙区制では死に票(wasted vote)が多くなる。投票率にもよるが、たとえば、有権者全体の4分の1の支持しか得られない政党でも易々と議席の過半数を制して政権が獲れてしまう。

 また、世襲議員のようにその地方で圧倒的に有力な候補者が君臨している選挙区では、新人が勝てる見込みがほとんどなく、有望な対立候補が育ちにくい。そのような選挙区の有権者にとって、選択肢は事実上ないに等しい。民主主義の理想からいって、選挙区間の一票の重さの格差よりもはるかに大きな問題が、小選挙区制にはつねにつきまとう。

 この国の現状を見る限り、長い議会政治の伝統に裏付けられた二大政党による安定した政権の姿とは程遠い。現行の選挙制度による総選挙で選ばれた政権はこれまで、首相が何度も交代したり、末期には離反者が相次いで政党が乱立したりして、大きな政治的混乱を招いてきた。もっとも、多党化それ自体は必ずしも悪いことではない。むしろ、選択肢が増えるのは有権者にとって歓迎すべきことだ。政党が乱立したところで、いずれは選挙を経て淘汰される。

 民意をもっと正確に反映させ、政策本位で政党を選ぶためには、比例代表制(proportional representation system)を中心とした選挙制度が望ましい。各選挙区で人口が増減しても議席配分を調整すれば済むから、小選挙区制とは違って面倒な区割りの見直しもいらない。ただし、第一党単独で議席の過半数を制するのは難しくなり、連立政権または少数与党が生まれる可能性が高くなる。それでも、比例代表制を採用している多くの国々でことごとく不安定な政権が生まれるという話はとんと聞かない。安定的な政権運営ができるかどうかは、選挙制度よりも、その国または地方の政党とそれを支える有権者の政治的な成熟度に依存しているからではないか。

 有権者が投票に行くことにもっと意義を見出せるような、より合理的な選挙制度の導入を願ってやまない。

(『財界』2013年1月29日号掲載)


※掲載日:2013年1月29日/再掲載日:2015年3月4日
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