Customer dissatisfaction 顧客不満足 (連載第212回)

 自宅にいながら銀行口座を管理できるインターネット銀行(online bank)にはおおむね満足してきたが、某行でこのところ、首を傾げたくなるようなサービスの低下が相次いでるのには、いささか閉口している。

 キャッシュカードについているデビット機能を近日中に停止するとか、その銀行の新たな親会社の何とかという会員にならなければ、同行間の振込手数料などのサービスの一部がこれまでのように無料にならない、などと言ってきたのである。いずれも私はほとんど利用していないので、個人的な実害は少なかったが、インターネットの掲示板を見たところ、利用者の間では怨嗟の声が渦巻いていた。

 経営環境が厳しくなっている今日、サービスが多少低下するくらいは、仕方がないと思う。問題は同行の態度にある。たとえば、私の手元にあるキャッシュカードのデビット機能はもともと、こちらから頼みもしないのに、向こうで勝手につけてきたものだ。ところが、今度は突然、これから何々には使えなくなるだの、そのまま使い続けたかったら金を払えだのと言われた。これで気分が良いわけがない。無料というから安心して日々の支払いに使ってきた顧客は、さぞ失望しただろう。新たに何とか会員とやらへの登録を申し込めという話も、そのサービスの内容や規約を読んで検討する時間が取られて無性に腹が立った。

 新興のネット企業は、メーカーなどの従来型の企業に比べて顧客満足(customer satisfaction)の意識に欠ける、と言ったら言い過ぎだろうか。それとも、私の考え方が古いだけで、ネット企業の顧客への配慮とは、そもそもその程度のものなのか。

 米国には、従業員満足(employee satisfaction)をうたっている面白い航空会社があるそうだ。低料金でサービスを提供する代わりに、顧客満足は二の次だと公言して憚らない。ところがその航空会社、けっこう人気があるらしい。楽しく働いている従業員が、よくジョークを飛ばして乗客を楽しませるという。運航する航空機を一機種に統一することで保守費用を抑えるなどの工夫にも、好感が持てる。

 企業は顧客に対する「上から目線」で、サービスの低下をまるで当然のことのように通告するのではなく、もう少しすまなそうな態度を示すなり、受け入れやすい形で説明するなりしてほしい。これはコストの転嫁以上に、コミュニケーションの問題だ。

(『財界』2010年5月11日号掲載)


※掲載日:2010年5月25日/再掲載日:2015年2月16日
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