Commitment コミットメント (連載第203回)

 この原稿を書こうとして、先月〔2009年11月〕来日したオバマ大統領の講演をインターネットで視聴しようとしていた矢先、Twitter(ツイッター)でフォローしている方々から「講演はここで視聴できる」「英語の原文と日本語訳の対照表を作った」などのご教示をいただいた。前回まで「Twitterの面白さがわからない」とぼやいていた私だが、どうやら、自分が興味のある話題に関心や造詣の深い人をうまくフォローすると、情報収集に役立つことがわかってきた。人付き合いの苦手な私には、むしろ有用なツールになりそうだ。

 さて、そのオバマ大統領は、24時間足らずの短い滞在時間で大きな存在感を示した。11月14日に都内で行われた30分余りの講演はテレビでも中継され、注目を集めた。

 ハワイで生まれ、インドネシアで少年時代を過ごした大統領は、子どものころ訪れた鎌倉では大仏よりも抹茶アイスに気をとられたという思い出話をマクラに使いながら、自分はAmerica's first Pacific President(米国初の太平洋地域出身の大統領)だと、しきりにアピールしていた。外国の要人の来日時の講演では、日本文化に関する引用や日本との結びつきを示す逸話を持ち出すのは定石だが、オバマ大統領の場合は、その人柄の良さや話術の巧さもあって、一段と受けがよかったようだ。

 大統領は、この国の戦後の経済復興を「日本の奇跡」(the Japanese miracle)と持ち上げながら、それをもたらしたのは「日本人の粘り強さや勤勉さ、ならびに日本の安全保障と安定に対する米国のコミットメント」(America's commitment to the security and stability of Japan, along with the Japanese peoples' spirit of resilience and industriousness)であったと述べ、日米関係の重要性を訴えた。この講演ではcommitment(コミットメント=関与、肩入れ)という言葉が7回も使われており、全世界、特にアジア太平洋地域への関与をさらに深めようとする米国の意志を改めて強調する狙いが窺えた。アジア重視の外交姿勢への転換を示唆した日本の新政権を牽制する意図さえ感じられたが、それは素人の穿った見方だろうか。

 その講演の原稿と映像は、ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されている。講演の翌日にはすでに日本語訳のほか、中国語、ハングル、インドネシア語への翻訳も載っていた。大統領自身の魅力もさることながら、米国の現政権の情報発信力にも恐れ入った。

(『財界』2010年1月5日号掲載)


※掲載日:2009年12月22日/再掲載日:2015年2月11日
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