Free-for-all 誰でも参加できる (連載第201回)

 外国企業のプレスリリースを翻訳していると、自分で使ったことはおろか見たこともないコミュニケーションツールが次々と登場するのには、少し閉口している。

 自分で使ってきたメールマガジン(メルマガ、e-newsletter)やブログ(blog)はまだわかる。米国ではFacebook(フェイスブック)、日本ではmixi(ミクシィ)に代表されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は使ったことはないが、会員制のブログネットワークのようなものだろう。

 最近〔2009年当時〕、Twitter(ツイッター)という名前をよく聞くようになった。例によって米国発祥のツールだが、日本語版ができてから、国内でも利用者が増えているという。どういうものかインターネットで調べてみたところ、私が理解した範囲で大雑把にいうと、匿名掲示板やチャットの類とブログの中間的なものらしい。自分のサイトに短い「つぶやき」(tweet)を書き込むと、その中の言葉に反応した誰かが応答することによって、コミュニケーションが発生する。Twitter利用者のことを英語でTwittererというそうだが、そのまま「ツイッタラー」と訳しても、Twitterが何か知らない人には、何のことやら見当もつかない。

 何かしらの面倒な初期設定が必要なメルマガやブログ、会員制が原則のSNSとは違って、この新手のコミュニケーションツールは、誰でも簡単に、自由に参加できる(free-for-all)のが特長らしい。利用者が増えているのは、そのせいもあるのだろう。

 功利主義的な発想をしがちな私はつい、それがいったい何の役に立つのかと考えるが、Twitterはどうやら、少なくとも私にとっては、これといって役に立つものではないようだ。現実の世界にたとえていうなら、たまたま隣り合わせた人同士が何気なく始めた天気の話から世間話が始まるようなものだろうか。インターネットに接続されたパソコンやスマートフォンを使って、通信費や手間暇をかけてわざわざそんなことを…と思わないでもないが、今日のウェブ環境はそれくらい、空気のように自然な存在になっているのだろう。

 Twitterについて調べているうちに、やってみようかとふと思ったが、やめておいた。どこの誰とも知らない人とコミュニケーションを取りたいとは思わない。逆に、意外におもしろくなって、はまりこんでしまうのも怖い。

(『財界』2009年11月24日号掲載)


※掲載日:2009年11月24日/再掲載日:2015年2月9日
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