New era of responsibility 新たな責任の時代 (連載第184回)

 〔2009年〕1月20日に行われたオバマ新大統領の就任演説(Inaugural Address)は、日本国内でも高い注目を集めた。意外にもその評価は分かれたようだが、私が素人目で見る限り、演説原稿は周到に練り上げられていたように思う。

 この国の一部のテレビ報道は、オバマ氏が "Yes, we can!"と言わなかったと奇妙な解説を加えていたが、当たり前だ。あれは選挙運動用のキャッチフレーズだ。かつてのケネディ大統領(JFK)も、New Frontier(ニューフロンティア)というあの有名な言葉を就任演説では使っていない。

 そのJFKの就任演説と比較するとわかるが、オバマ新大統領の演説には、全体的にそれとの類似点が多い。選挙という平和的な手段による政権交代で米国の民主主義の古き良き伝統が受け継がれたことを称え、国内外に対して新政権の方針と決意を表明し、ともに未来に向かって諸問題の解決に取り組んでいこうと呼びかけた。

 特に注目すべき類似点は、まるで戦時下のような非常に厳しい危機認識だ。1960年代のケネディ政権は発足当初から米ソ冷戦の最中にあったが、オバマ新政権の課題は、経済危機とテロへの対策だ。新大統領は、就任演説にしては痛烈な言葉を使って言った。"Our economy is badly weakened, a consequence of greed and irresponsibility on the part of some,"(米国の経済がひどく弱体化したのは、一部の人間の強欲と無責任だけでなく) "but also our collective failure to make hard choices and prepare the nation for a new age."(厳しい選択を避けて、新時代に向けて国を準備させられなかった全員の失敗の結果である)という言葉が耳に痛かった人も多かったことだろう。

 もちろん、新大統領は米国民を鼓舞することも忘れていない。"Starting today, we must pick ourselves up, dust ourselves off, and begin again the work of remaking America."(自分で立ち上がり、服の埃を払って、米国を再生させる仕事に今日から取りかからなければならない)などと力強く呼びかけた。

 新大統領はこの演説で「新たな責任の時代」(New era of responsibility)という言葉を使った。この難局にあってその責任を最も強く受け止めているのは、他ならぬ彼自身だろう。

(『財界』2009年3月10日号掲載)


※掲載日:2009年3月24日/再掲載日:2015年2月6日
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