The failure is mine 失敗は私の責任 (連載第180回)

 米国の大統領選挙〔2008年〕に勝利したバラク・オバマ候補の歴史的な演説の少し前に、敗れたジョン・マケイン候補が地元のアリゾナ州で支持者を前に行った敗北演説もとても良かった。

 マケイン氏は、約10分にわたるこの演説で、ときおり不満の声をあげる支持者をなだめながら、オバマ候補の勝利を率直に認め、米国に黒人大統領が誕生した歴史的な意義を称え、新大統領の下での国民の結束を訴えた。かつて人種差別があった歴史を振り返りながら、彼はこう言った。"Let there be no reason now for any American to fail to cherish their citizenship in this, the greatest nation on Earth."(地上で最も偉大なこの国で、アメリカ人が誰一人として、その市民であることを大切に思えない理由はもはやあってはならないのです。)

 惜しくも敗れた選挙の結果については、"And though we fell short, the failure is mine, not yours."(及ばなかったが、この失敗の責任は、皆さんにではなく私自身にあります)と述べた。さらに、"I don't know what more we could have done to try to win this election. I'll leave that to others to determine. Every candidate makes mistakes, and I'm sure I made my share of them."(この選挙に勝つためにこれ以上どういうことができたのか、私にはわかりません。その判定は誰か他の人に任せましょう。どの候補者も失敗を犯すものですし、私もまたそのひとりに違いありません)という一節にも、「敗軍の将、兵を語らず」という言葉を地で行くような、元軍人らしい潔さを感じた。

 マケイン氏の人柄の良さが、この演説の随所ににじみ出ていた。選挙期間中はネガティブキャンペーンが批判を受け、候補者のテレビ討論でも激しい対抗心をむきだしにする一面を見せた彼だが、最後の立派な演説によって後味の良さだけが残った。

 いっぽう、日本では、選挙に敗れた候補者や政党幹部の口から「私の不徳の致すところ」という自責の言葉や敵対政党をなじる怨み言はあっても、相手の勝利を祝福する奥ゆかしい言葉や心に残る名言は、とんと聞いた覚えがない。

 お国柄や制度の違いもあるし、何でも米国流を真似るのが良いとは思わないが、これほど心に残るスピーチが敗者から聞かれるところにも学ぶべき点がありそうだ。

(『財界』2009年1月20日号掲載)


※掲載日:2009年1月26日/再掲載日:2015年2月5日
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