White goods 白物家電 (連載第159回)

 新年〔2008年〕早々、日本を代表する家電(home appliance)大手の松下電器産業が創業以来の「松下」という社名を廃してブランド名の「パナソニック」(Panasonic)に変えるというニュースを聞いて、少し驚いた。日本国内で白物家電(white goods)に長年使ってきた「ナショナル」(National)ブランドの使用も止めて、「パナソニック」に統一する方針という。

 40代半ば過ぎの私でさえ、「パナソニック」よりは「松下」という社名や「ナショナル」という古いブランドのほうに馴染みを感じるくらいだから、私より上の年代の人なら、もっと名残惜しく感じているだろう。社内の関係者にとっても、並々ならぬ決断だったに違いない。

 ひとつの会社が複数のブランドを展開するのは、別に珍しいことではない。かつてソニーが手がけていた白物家電には「ソニー」(Sony)ではなく「ソネット」(Sonett)というブランドが使われていた。対象市場や販路の違い、将来の事業再構築の可能性といった様々な条件を考慮すれば、複数のブランドをうまく使い分けるという選択肢も当然ありうる。

 しかし、他のアジア諸国のメーカーとの競争が厳しい昨今(特に海外)の家電市場では、門外漢の私などが想像する以上に企業のCI(Corporate Identity、コーポレートアイデンティティ)戦略が難しい時代に入っているのかもしれない。

 このニュースで耳にした「白物家電」という言葉は、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの生活用家電を指す言葉として一般に定着した感がある。英語では文字通りwhite goodsで通用すると思っていたが、米語ではガス器具等も含めてmajor appliance(大型家電)と総称しているようだ。

 これに対して、テレビやVTR(今はDVDレコーダーか)のようなAV製品は、業界では「ブラウングッズ」(brown goods)と呼ばれてきた。この種の製品の色は、今ではブラックやシルバーが主流だが、かつては木目調(茶色)のキャビネットが多かったからだろう。「茶物家電」と言う人はいないが、「黒物家電」という言葉はあるそうだ。いずれにしても、「白物」ほど一般的な言葉にはなっていない。

 かつて聞きなれたブランドや言葉がひとつひとつ姿を消すたびにどこか心寂しく感じる私も、それだけ年を取ったのだろうか。

(『財界』2008年2月26日号掲載)

※掲載日:2008年2月25日/再掲載日:2015年2月1日
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