UK/US 英国/米国 (連載第152回)

 実務文書に頻繁に現れる固有名詞の表記の統一に悩まされることがよくある。国名もそのひとつだ。

 UK(U.K.=the United Kingdom)は、文字通りに訳せば「連合王国」だが、日本語の文書では「英国」と表記するのが通例になっている。同様に、US(U.S.またはUSA=the United States [of America])は、正式には「(アメリカ)合衆国」でも、通例に従えば「米国」と書くことが多い。

 一方、他の西洋諸国の多くは、フランスにしてもドイツにしてもカタカナで書く。今日では仏国(仏蘭西)とか独国(独逸)と書く人はまずいない。そのため、米国や英国を他の国々と併記すると、漢語とカタカナ語が混在してしまう。前に、ある文脈でどうしても違和感があったため「英国」を「イギリス」と言い換えたところ、依頼元から「表記は『英国』に統一してください」と言われたことがあった。

 「英国」では、イングランド(England)とともに「連合王国」を構成するウェールズ(Wales)、スコットランド(Scotland)、北アイルランド(Northern Ireland)への地方分権が進み、さらに一部の地域には独立に向けた動きもあるらしい。そのせいか、イングランドを連想させる「イギリス」やBritish(イギリス人)という言葉は、それ以外の地域の関係者にはあまり好まれないのかもしれない。

 「米国」の使い方も悩ましい。国名を単独で使うなら「米国」でいいが、「米国人」「米国議会」と熟語にすると堅苦しいので、つい「アメリカ人」「アメリカ議会」とカタカナで書きたくなる。しかし、同じ文章の中に「米国」と「アメリカ」が混在していると、違う国(地域)を指している印象を与えかねない。どちらか一方に統一できるなら、そうしたほうがいいようだ。

 英語のAmerica(アメリカ)はなかなかクセモノで、往々にして米国以外の米州諸国が含まれる。特に、Americasと複数形になっている場合は、ほぼ間違いなく「南北アメリカ全域」を指している。一方、米国を除く米州地域にこの言葉を使っている例も見たことがあって、本当に油断できない。

 そういえば、わが日本にも「ニホン」と「ニッポン」の二通りの読み方があるし、英語ではどういうわけか昔からJapanだ。国の名前は、一見簡単なようでも、実はとてもややこしい。

(『財界』2007年11月6日号掲載)

※掲載日:2007年12月9日/再掲載日:2015年1月28日
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