Wishing you a happy New Year!  謹賀新年 (連載第12回)

 相手が誰だろうとかまわずにクリスマスカードや年賀状を出すのはいかがなものかと思う。そういう慣習のない人も、もらった以上は返事を出さないわけにもいかないから、どこか気詰まりだ。

 異教の文物をわりと寛大に受け入れるこの国では、Merry Christmas(クリスマスおめでとう)と書かれたカードを受け取ってもあまり気にしない。一方、かつてキリスト教とは相容れない関係にあったイスラム教やユダヤ教を信じている人々の中には、このような表現や宗教画が入ったカードをもらうと不快に思う人がいるかもしれない。

 それでは、イスラム教徒にはカードをやりとりする慣習がないのだろうか。そう疑問に思ってインターネットで調べてみたところ、イスラム教最大のお祭りの季節であるラマダン明け(今年は12月17日頃)に送る「イード(Eid)カード」というものがあるらしい。

 文面を見ると、Wishing you a happy Eid ul Fitr(たぶん「ラマダン明けおめでとう」)などと書いてあるから、何にせよ賀状の一種には違いない。もっとも、これが世界各地に広がるイスラム教徒すべてに共通の慣習かどうかは、門外漢の私にはわからない。

 イスラム教では偶像崇拝(idolism, worship of idols)を禁止しているせいか、調べてみた限りでは、人物とか動物の絵や写真が載ったカードはなかった。風景や花のように、宗教上、差し支えない図柄を使っているようだ。

 一方、新年を賀して出す日本の年賀状なら、受け取る相手の宗教上の問題はそれほど気にしなくてもいいかもしれない。たとえ相手に新年を祝う慣習はなくとも、まさか新年を忌み嫌う宗教もないだろう。

 つまるところ、カードを出す相手の宗教的な背景がよくわからない場合、その文面はWishing you a great holiday season!(休暇の季節がとても楽しいものでありますように)とかWith best wishes for a most prosperous and happy New Year!(新年のご繁栄とご多幸をお祈り申し上げます)くらいにしておくと無難かもしれない。

 慣習の違いに関係なく、どの宗教を信じる人々でも心から喜ぶことのできる平和な新年の到来を祈りたい。

(『財界』2002年1月1日号掲載)

※掲載日:2001年12月18日/再掲載日:2015年1月1日
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