Pros and Cons  賛否両論 (連載第4回)

 この〔2001年〕6月にNHK衛星第1放送の『インターネット・ディベート』という討論番組に出演する機会を得た。本を上梓してからこのかた、雑誌やラジオには何度か出させてもらったが、テレビに出るのは初めての経験だ。テレビでは実際よりも顔が丸く映ると聞いていたので、このところ太り気味の私は、出演の打診があってからあわてて2 kgほど体重を落とした。

 「昇進に英語は必須か?〜企業の英語至上主義を問う」というテーマで行われたこの討論では、英語の試験を管理職の昇進基準として使っている昨今の日本企業の風潮に対し、私が「社員のコミュニケーション能力から管理職としての資質まで、ただ1種類の英語の試験で測ろうとする考え方はおかしい」と異論を唱えた。

 「ディベート(debate)」と名がつく以上、賛否両論を闘わせなくては面白くない。そこで、「中国語が堪能な社員まで英語の試験で評価するのか? そんなことをしていたら、英語の試験で良い点を取れる人材しか集まらない」などという少し意地悪な質問もしてみた。

 もっともこれは、対立する論点を浮き彫りにして議論を白熱させるために、極論に近いと知りながらあえて言ってみたものだ。英語にはplay the devil's advocate(議論の妥当性を試すためにわざと悪役に回って反論する)という言葉がある。この番組では私も多少、意識的にその役回りを演じてみたわけだ。

 もちろん、私のような凡人の場合、その場の思いつきだけでうまいことを言おうとしても、なかなか言えるものではない。だから、相手や周囲を説得できるような例え話や言い回しをあらかじめ考えておく。母語に比べて不得手な英語での議論に参加するなら、なおのこと周到な準備が必要だ。

 議論は、場数を踏んだ人のほうがどうしてもうまくなる。何度か参加しているうちに、相手が使っている表現や技術などが見よう見まねで身につくし、慣れも手伝って度胸がついてくる。

 英語での議論に躊躇している向きがあるなら、「もう少し英語を勉強してから」などと悠長なことを言っていないで、賛否両論の立場から積極的に議論に臨み、意見を闘わせてみよう。コミュニケーション上達の要諦は、何といっても「習うより慣れろ」だ。

(『財界』2001年8月21日号掲載)

※掲載日:2001年8月28日/再掲載日:2014年12月29日
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