バーアンテナ 5球スーパーと呼ばれてる、MWとSWの2バンドラジオです。40年近くも前の、日立製作所S-565(フローラ)です。構成は6BD6-6BE6-6AV6-6AR5と6X4、それに同調表示のマジックアイ6ZE1です。

 やや左手側にある黒い棒がバーアンテナです。アンテナは屋外に逆L型を建てる様にと示してありますが、近距離局なら内蔵のバーアンテナでこと足ります。このバーアンテナは90度動かせる様になっており、細かい所まで気を配ってるものと思いました。このラジオをいじってる時、ちょうどBCLブームとかで松下やソニーなどからそれ用のラジオ受信機が発売されていました。松下ではクーガとか言うジャイロアンテナ(その中身はフェライトバーアンテナ)を特徴としたちょっと小粋な面構えのラジオを出してました。それより10数年前にラジオ本体を動かさなくても中波受信の感度が改善できる機能を持ってたんですね、この真空管ラジオ。

 バリコンは羽式の2連もので、すべて金属製です。ホコリのためか金属特有の輝きはなくどよんとしてます。このバリコンとバーアンテナで同調回路を形成し、目的局の周波数に合わせます。この同調回路から信号を取り出し、バリコンの左隣にあるコイルで形成された局部発振回路で発振させた信号と6BD6で混合、中間周波数に変換してトランス経由で6BE6(シールドされてるの)に送ってます。その後検波(6AV6)、増幅(6AR5)してスピーカを駆動しています。


整流用2極管 整流部を担う6X4です。中央付近で光ってるのがヒータです。実家に帰った時はヒートランを兼ねて電源入れてます。これからの季節は重宝しますが、夏場はちょっと困りもの…

 このバリコンの駆動系にはフライホイールが入ってます。またダイヤルパネルやモード表示の光源に6.3Vの電球が惜しげもなく使われています。真空管ラジオというとアンティークっぽいのですが、これは昭和34年頃に大量生産されたもの故それほど重宝されていない様です…。しかしながら、昭和50年代の小学校〜中学校の時にいじりまわしていた覚えがあり、こっち方面に進むきっかけの一つになったもので自分にとってはとても思い出深いものです。いじりまわした割には壊れず今もってニッポン放送(*)とか聞けます。幸いにもこれに使われている真空管は秋葉原等の専門店で(まだ)入手可能ですが、どれでも1本買うと安いトランジスタラジオが買える、結構高価な部品です(1,000円〜2,000円くらい)。

 もちろんボリュームや機械接点とかが酸化してて動かすとノイズが入りますが、一度固定(確定)して動かさなければ受信に一向に影響はありません。整流管(6X4)の近くにでかい電解コンデンサがあるのですが、受信音にブーンというハム音が入っているとは感じられないのでまだ深刻な容量抜けは生じていないと思います。この頃の電化製品って造りがしっかりしてるなと感心してます。


(*)ニッポン放送
 送信所は実家に近い木更津市にあります(ニッポン放送送信所参照)。



 このページはバーアンテナについて書いて見ましたが、併せて出てくる真空管、かなり懐かしい響きになります。以前電話級アマチュア無線技士(現:第4級アマチュア無線技士)の試験(無線工学)の分野で電子管及び半導体というのがあり、中学の技術家庭科で習うよりほんの少し前に文字だけは知ることになります。もっとも、粗大ごみ置き場に時折出されていたテレビからガラス管(当時は真空管満載)を取りだして壁にぶっつけて割っていた時分もありました(今考えると恐ろしいことをしていたものです…)。さすがにブラウン管(という、でかい電子管)には手を出しませんでしたが。

 このページにある真空管ラジオは初稿から10年近く経過していますが、まだ動きます。時々火を入れる程度なので稼働時間という面ではそれほど経過していないと思えますが、実環境では湿気や温度の変化で自然劣化がかなり進行しており、この面ではとっくの昔に製品寿命を全うしていると思います。火を入れる際には十二分に注意し、その前に部品の目視点検や必要に応じて絶縁抵抗測定などを行わないといけんかも知れません…

 真空管については陸上無線技術士等の試験科目である無線工学の基礎では項目としてまだありますが、出題としては減ってきている様ですね…。無線工学Aでも受像機や測定器において最後の牙城であったブラウン管が液晶パネルに置き換わっているので、こちらも減少傾向。放送用送信機(終段)もかなりFETに置き換えられてますが、マイクロ波高出力(レーダなど)やレントゲン装置など限られた分野ですが活躍中なのでまだまだ調べることは続きます。もっとも…クライストロンやX線管に比べると派手さはありませんが、ラジオ受信機の筐体の中にあるガラス管(=真空管)の中でぽわっと灯っているヒーターを見るとなんか落ち着く気になるので不思議なものです。



初稿 2001.11.11
追記 2010.06.30


ひとつもどります