水門管理棟 ここにて天竜川の起点が諏訪湖釜口水門とわかった訳ですが、その水門の管理棟が左図です。右岸側より諏訪湖方を見た状況、対岸の局とのマイクロ回線が設定されていることを知らしめる、レドームつきパラボラが搭載されている鉄塔があります。


鉄塔拡大 鉄塔のアンテナ実装部を拡大してみました。マイクロ回線以外にVHF帯の回線もあるようです。パラボラと90度ちょい程度の角度で3素子の八木宇田アンテナ、パラボラの下方にスリーブアンテナ(らしきもの)が設置されています。見上げた角度が宜しくなかったので下側の八木宇田アンテナの指向方向が画面手前方か後方かわかり難いです。八木宇田アンテナは導波器−放射器−反射器の順でだんだん素子長が長くなるのでそう言った感じがつかめる角度で見てみたいものです(次回は)。

 管理棟2階にあった展示室(水門の歴史とか、パネル展示なんがかしてあります)にあったパンフによるとテレメータ16局、放流警報装置(サイレン)32局とありましたのでこのうちの何局かと無線リンクが設定されているものと思います。それらの情報の取りまとめ回線が左側のマイクロでしょうか。近隣ダムの水位とか雨量とかの情報を多重化して庁舎に向けて送信、と。デジタル回線であれば時分割多重とかが考えられるのですが、小口太郎氏特許の有線及び無線多重電信電話法で言う多重と何が違うのでしょうか?根っこは一緒なのか、それとも全く別物なのか…


釜口水門から離れて 左図は諏訪湖岸のSBCラジオ送信所にあった、5素子の八木宇田アンテナです。向きが美ヶ原の方なのでおそらくSTLのもの(予備かも?)と思います。こちらは導波器の部分に雪避けカバーらしきものが設置され異様に太くなっています。カバーの形状からこのアンテナの導波器も釜口水門局のそれと同じく折り返し型と思います。折り返し部分に着雪するとアンテナの特性が変化することもある様です(ここ後半参照)。垂直・水平どちらの設置方法が着雪し難いか、あるいは地上高によって、あるいは場所(指向方向)によって…等々の諸条件でレドームの要・不要が決まることと思いますがやっぱり自然相手は大変ですね(電波伝搬も自然相手の一つですが…)。


撮影:2005.10.21 14時頃
初稿:2006.11.19
追記:2006.12.10(有線及び無線多重電信電話法のこと、少し ↓)

 有線及び無線多重電信電話法は1921(大正10)年12月15日に出願されたそうです。顕彰碑には発明とありますが、この日に特許庁に出願され、1922(大正11)年6月7日に特許が認可されています(日本で、です。特許第42787号)。図書館で調べた書籍(*)にその特許(公報)の一部が紹介されていましたが、ドップレル効果なるもの(?)を応用したそうで…その公報の中で「本発明の原理は前項に述べる如く従来の波長の異なる電波を重畳して得る有・無線の多重電話法のそれと異なる」旨の記述があることから、マイクロ回線でおなじみの周波数多重方式とはちゃうみたいです。氏は更に追加特許申請を行い、1924(大正13)年4月に特許第50176号を得ています。

 12月にはもうひとつ、エポックがあります。1901年12月12日、上記の特許が出願される20年前にマルコニー(G.Marconi)が英国から北米の約3,600kmの距離を隔てて無線通信の実験をし、成功しています。こちらは後に明らかにされる電離層絡みで興味深いものがあります。雑音混じりの中で電信符号を聴き取るのは並々ならぬ苦労があったことと思います。一方100年経過した現在では新たな雑音の中で電信符号や音響を聴き取ることになっていますが…でも自然ないしは人工雑音を如何に回避する(低減する/させる)ために「個人的な無線技術の興味によって行う通信及び技術的研究」をするのも面白いかと思います。

(*) 小口太郎生誕90周年記念誌(小口太郎顕彰碑等建立実行委員会・編 1988年10月)


釜口水門から離れて・テレメータ局 左図は水門から天竜川に沿って0.5キロ程度離れた所に架かっている天竜橋近くにあったテレメータ局の3素子の八木宇田アンテナです。この位置から見ると左手の反射器と右手の導波器の長さの違いが良く分かります。中央の放射器は他の素子に比べ倍以上の径を有し、給電部分も特徴が見られます。

 対向局(水門の鉄塔)は右手方、導波器と放射器の間の間隔が放射器と反射器の間隔より狭くなっているいるのも観察されます。放射器と反射器・導波器それぞれの間隔は空中線の利得と前後比に影響するとあります。利得と前後比はどちらかを良好にするとどちらかがその代償に低下する相関があり、アンテナの設置される環境によりどちらを優先するか決める様です。反射(他のサービスエリアから/への干渉)対策(前後比)の方を優先させるか、利得(対向局との通信状況)を優先するかは総合的に決めるものと思います。


釜口水門から離れて・テレメータ局全景 左図はテレメータ局から諏訪湖方を見たものです。


撮影:2007.04.15 12時頃
追記:2012.02.06 誤記訂正(SBS→SBC ごめんなさい)、テレメータ局追加

ひとつもどります