送信所全景  二条城の北側にNHK京都放送局があります。概ね放送局は街中にスタジオ(演奏所)があり、郊外に送信所があることが多いの(特に中波放送は顕著)ですが、京都放送局は演奏所と(中波)送信所が同居しています。送信周波数は621kHz(λ≒483m)でアンテナが大きくなるはずなのですが、鉄塔2本の間に架線された2条のアンテナで運用されていました。左側の鉄塔にはパラボラが2基設置されており、上側のは比叡山方向(テレビ送信所があるらしい)を向いています。

 鉄塔の間に架線され、中央で給電されている形式のアンテナですが長さから半波長ダイポールアンテナではなさそうです。おそらく垂直部分もアンテナとして動作する、T形アンテナだと思います。最近のアンテナ関係の書籍を参照すると中波放送(送信アンテナ)の記述はさらりと書いてあり、殆ど支線式(鉄塔)アンテナのみの記述が多いです。放送の初期にはT形や逆L形(これはBCLとかで受信用として良く見聞きします)が主に用いられたが、現在では支線式の自立柱形式が用いられる…との記述もありました。

 T形アンテナは垂直部分からも放射があるため水平部分(鉄塔間に架線されている部分)は垂直部分の上端にある容量性負荷と考えられ、良く見かける頂部負荷(わっか付き)アンテナと似て来ます(逆L形も同様です)。T形、逆L形を始めわっか付きの鉄塔も広義には線状アンテナに区分されます。

ちょっと引いてみます  撮影場所は二条城本丸御殿天守閣址です。もと天守閣だけあって見晴らしは良く比叡山も見えました。また城内の木々も(新緑の季節らしく)緑に生い茂って目に良かったです。鉄塔自体は二の丸庭園からも見え、前回('03年8月)に来た時から気になってはいました(この時は暑さに負けて本丸御殿を単に通過しただけで天守閣址はパスしました)。…今回は確認できました。

 T形アンテナは中波放送局のアンテナとしてはクラシカルな部類になるみたいで、これを見かけるとは世界遺産(例:二条城)がふんだんにある京都らしいなぁ…と思ったりしました。なお同じ中波帯を送信しているNDBでは札幌、函館、羽田の各局がこの形式です。京都のこれは(架線が)2条でしたが、札幌・函館は5条でした(羽田は未確認)。架線の条数が増えると容量性負荷が大きくなり、そのぶんアンテナの構造を小さくできるのでしょうか…?


撮影:2004.05.01

【参考図書】
 アンテナ・電波伝搬(虫明康人・著 コロナ社)
 アマチュアのアンテナ設計(岡本次雄・著 CQ出版社)→絶版、後継は「アマチュアのアンテナ設計法(岡本次雄・著 CQ出版社)」


T字部分 T形アンテナの垂直部と水平部の接続点の拡大です。

給電部分 2条の水平部に接続された垂直部は架空大半の部分で水平部同様に平行になっていましたが、局舎屋上付近でお互いに接続されていました。接続点少し上にあるバーは絶縁物か、導体か不詳です(線間の離隔のみ担当しているのか、ショートバーの様にこれをスライドさせて電気特性を調整するのか不詳)。また接続点においてステーが3方に張られていますが、碍子らしきのが見当たりません。ステー接続点下側には碍子の様なものがあります…構造物的にはワイヤーだけなのですが、電気的動作(アンテナとしての動作)はややこしそうですね。


撮影:2006.11.26
追記:2006.12.04

ひとつもどります


NHK京都放送局