鉄塔遠景  京都駅などから山科(新幹線東山トンネル)方を見ると山の上に鉄塔が見えます。これは朝日・毎日・大阪各局の(中波放送)中継局、また二条城近くにはNHK京都放送局(演奏所と中波送信所が同居)があります。一方、京都の地域放送である京都放送は京都市から下って久世郡久御山町に20kWのラジオ送信所を構えています。

 左図は宇治市にある近鉄大久保駅から京都放送の送信所方面を見たものです。大久保駅は高架ホームですので見晴らしが良く、この日初めて京都市内から地下鉄(竹田で近鉄乗り継ぎ)経由で当地に来ましたが目標は容易に見つかりました。ただ、目標点は駅から直線距離で3キロほどありますのでバス利用としました。

鉄塔全景  バスに揺られて下津屋停留所まで、ここで下車すると目標点はもうすぐです。付近は工業団地で、(餃子の)王将久御山工場もありました。その、王将の隣に送信所があります。

 左図はその脇を何気なく通り過ぎて京阪国道(国道1号線)に出て、そこから撮ったものです。付近は1キロほど下ると木津川、また上ると巨椋池を干拓した地区といったいわゆる湿地帯に分類されるのでしょうか、接地型空中線の動作条件に最適な場所ではないかと思います。


正門  国道1号線から再び工業団地内に戻ります。左図は送信所正面、塀にはRadioという文字と周波数が大きく彫り込まれ、ラジオ(中波)の送信所ですよ…と云うのをアピールしています。

局舎壁面  局舎の壁にも大きく表示(さりげなく…でなく)。これはバス通り(府道15号)から折れて王将工場の前を通る道路面から見えるものです。


鉄塔基部  左図は鉄塔基部です。ここの局は基部絶縁ではなく、鉄塔基部が碍子にて絶縁されることなく基台がそのまま埋め込まれています(基部接地型)。鉄塔は8本の柱で構成され、その鉄柱を囲むように線条が張られていました。

 線条は鉄塔を囲む様になっていますので、基部付近では大きな輪っかに接続されています。この輪っかに各線条が接続(集線)され、左手方にある局舎の方に延びています。局舎引き込み部分は…残念ながら観察することはできませんでした。


鉄塔中間部  基部からの線条は3本一組になって鉄塔と一定間隔を保持しながら上に向かっています。所々で各線条がワイヤーで電気的に接続され、さらに鉄塔に接続されています。基部から塔頂まで一直線に線条を張れば塔頂で折り返す、いわゆる折り返し空中線となりますが、途中で鉄塔に短絡接続されていることにより複雑な動作をしているものと考えられます。

 この局の出力が20kWということからフェージング防止アンテナとしての動作が必要ではないかと思います。基部絶縁型の空中線だと電気長が0.53λとして目的を果たしています。鉄塔長(高さ)が不足する場合は頂部負荷を設置し、電気的(等価的)に0.53λとして空中線上の電流分布を調整することで高角度放射(60°方向)を抑制しています。

 一方、線条を鉄塔に短絡することによって線条と鉄塔それぞれの電流分布を変化させることにより垂直指向性を調整し、高角度放射を抑制することもできるとのことです。

ダウンリード終端部  基部からの線条は鉄塔全高の半分ちょっとの所で基部と同じ様に輪っかに接続されています。この輪っかは鉄塔に強固に固定されており、8本の柱の前に3本の線条、つまり24本の線条を吊り下げています。同時に超短波帯の(中波送信アンテナと比べれば、ですが)ちっこいアンテナの基台としても利用されている様です。右端にある3素子の八木宇田アンテナの放射器も折り返し型になっています。

 線条の観察に戻りますと、各線条は碍子を使用することなく直接輪っかに接続され、その先は鉄塔につながっています。これより上部には線条がありませんので、この部分で折り返しがなされている様です。

STL用パラボラ  京都放送の演奏所は京都市上京区にあります。京都御苑あるいは護王神社に隣接し静かな場所です。久御山町のここと演奏所を直線で結ぶとその線(電波伝播路)は京都駅の西方を通過します。東寺や東本願寺・西本願寺付近上空を通ってプログラムが届けられている様です。

 パラボラアンテナは鉄塔に固定され、鉄塔塗装の紅白の紅部分に銀色の反射鏡があるため目立ちます。放射器は導波管がそのまま反射鏡の前方に現れ、それがくるっと曲がって焦点の方に開口している、パラボラアンテナの典型例です。

 上図で輪っかに固定されている八木宇田アンテナの左側(パラボラ直下)のものが見難かったですが、左図で見るとこれも折り返し型の放射器を有するものでした。また各線条もそれぞれ鉄塔に接続されています。中間部では輪っか状に接続された部分から2本だけが鉄塔に接続されていましたが、ここでは個々の線条がもれなく鉄塔に接続されています。

 ここに行った日は未明に雨がぱらつき、ちょっと曇天の空模様でしたが見てる間は持ちました。いいかげん見終わった時にぱらぱら降り出しましたが傘を必要とするほどではありませんでした。この後府道15号方に進み、バスの田井停留所(ここが最も送信所に近い)から再び近鉄大久保駅方に戻ります。

 ここから竹田駅→市営地下鉄烏丸線に揺られ丸太町駅に進み護王神社→KBS演奏所と見て見ます。昨日の長楽寺もそうでしたが、護王神社も人影まばらでした。烏丸通(国道367号)を挟んだ京都御苑も同様で、蛤御門(KBS正面)や乾御門から御苑内部を見ても数人が見えただけです。暮間際の京都って静かなんだな…と思いつつ烏丸今出川交差点近くにある松屋で昼食。

 王将久御山工場を見た後なので王将を探して見ても良かった…ですが、昨日八坂神社近くの王将で食してましたのでさすがに連荘はどうかと。その後今出川駅から烏丸御池乗換二条駅まで進み、NHK京都放送局(の空中線)を見てきました。天候は午前中と違って快晴となりました。


撮影:2009.12.28 10時〜11時頃
初稿:2010.01.04

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