さしあたりこんな構図 週末に千葉に行って(帰って)きました。目的地は内房だったのですが、そこから30キロほど内陸に向かうと君津衛星管制センターなるものがあると地図帳に載っていたので日曜日の朝にタイヤ交換後の確認試走を兼ねて往復してみました。

 検索ページで「君津衛星管制センター」を調べると、「通信・放送機構 TAO(現・情報通信研究機構 NICT)」がフックしましたが、ここにあったプレスリリースを見ると管制業務は「当機構で行っている管制業務(通信衛星2機……N-STARa・b、放送衛星4機……BS-3N、BSAT-1a・b、BSAT-2a)は、平成14年4月1日以降、通信衛星については、ジェイサット株式会社が、放送衛星については、株式会社放送衛星システムが実施することとなります。」(「 」内は平成14年 3月26日付けのリリース文より引用)とありました。別のページには副管制局として運用…ともありました。

 ただ、地べたにパラボラがなっているのは壮観ですねと思い、閉ざされている門越しに3基のアンテナを見てみました。左のはオフセットカセグレン、中央と右側のはカセグレンとものの本(*)にありますが、後者の場合鏡面修正カセグレンと称するのかも知れません。

 少し前に衛星通信の地球局はなぜ郊外にあるのか考えるきっかけをいただきまして、ひとつはアンテナが大きくなるので土地のある郊外、都心部(人口密集地)は建物が多いので衛星方位からの天空雑音反射がメインローブ以外からも飛び込んでくるからそれを避けるために郊外…と考えていたのですが土地の件はともかく左図を見る限りではすぐ後方に山があり(というか、ここはアンテナが向いている方向以外は山に囲まれている状態)建物の反射と何ら変わりない様な気がしてきました。その他考えられることとしては人工雑音が少ない…ことでしょうか?管制に使用する周波数帯域は不詳ですが、他回線との干渉を避けるとすれば例えばマイクロ中継回線の希薄な場所…郊外になるのでしょうか?

 …大きなアンテナを幾つも設置しなければいけないので土地のある郊外に設置されている…というのは確認できましたが、建物の影響を避けるために郊外に設置してある、という考えはあんまし当たっていないという課題をいただいて帰ってきました。アンテナの詳細はもう少し調べてみます。

撮影 2003.02.02 09:56
(*)アンテナ工学ハンドブック(電子情報通信学会;1992.12.30 第1版第7刷)


 設置場所などについて追補…

 アンテナ関係の本ばっかしで調査していたので地球局通信用アンテナの動作に視点が奪われ、低雑音→サイドローブからの飛び込みの回避→建物の少ない(都市部でない)郊外という考えを持って君津に行ったら殆ど否定されて来た訳ですが… ただ、サイドローブからの飛び込みということから考えると衛星との通信に支障が出る可能性のある干渉電波や大地雑音などを回避することができれば良いと言うことになるかと。その一つが地上マイクロ回線(4/5/6/7/11/15/22GHz帯など多数)であり、衛星の方位とこれらの回線が離れていれば、或いは対衛星との通信周波数帯域が付近の中継回線と離れていれば干渉については問題が少なくなる模様。だからNTT立川のビル屋上にも地球局のアンテナ(中央線上りで立川駅でて程なく、進行方向に向かって左側の車窓から見えます)が設置可能なのでしょう…と思います。

横に岩肌が見えてます このことから君津の様に衛星方位(パラボラアンテナの指向方向)以外が山に囲まれているという事は、背後やサイドからの(衛星からの微弱電波より大きな)干渉波を抑制できることから、それ自身衛星地球局の設置場所としては最高のロケーションになるとのことです。この様な地形環境になっている場所が君津とかだったのでしょう。またその様な地形環境を構築した地球局もあります。例えば地上マイクロ回線からの干渉を避けるため周囲に土を盛り電波干渉防護堤を設けているなど。この様な地形環境を作りあえて地球局を都市部に設置しているとのことです(本件についてはてんしゅう様よりお教えいただきました。ありがとうございます)。

 左の図はカセグレンアンテナを裏側方面から見たものです。200mm望遠レンズで撮影しているので手前の水銀灯や電柱との遠近感がイマイチわかりにくいですが、現地で(初めて)見た時はその大きさに感動しました。主反射鏡裏側にはステーがいっぱい張ってありますね…鏡面の凹凸(鏡面精度)を向上するための措置でしょうか?ものの本(**)によると、この鏡面精度は1/16波長以下にする必要があるそうです。また反射鏡曲面にもゆがみがあると利得の低下、ビーム指向性に悪影響が出る等の問題が生じるとのことです。後者の場合1/8波長以下という数値がありますが、10cm以下の波長ではmm単位の世界ですね。開口径が10m以上の構造物でmm単位の精度…アンテナ自体も精密機器になってきています。

撮影 2003.02.02 10時頃
(**)アンテナ工学(遠藤敬二・佐藤源貞・永井淳 共著、総合電子出版社 1997年7月 第7版)

 街中に設置されている場合です。長野の電話局も局舎屋上(マイクロ鉄塔基部)に下図と同じ様なアンテナが設置されていました。

背後にマイクロアンテナいっぱい 立川駅から上り電車に乗って進行方向左側に電話局が見えますが、その屋上にある対衛星用アンテナです。反射板が4枚あることから、4回反射される形式のもの、また見難いですがホーンは2つありました。3番目の反射板(下側の丸い反射板)から2系統になっている様子。

 奥には各方面を向いた中継回線のアンテナが設置してありますし、このアンテナを見てる背後方には球体ガスタンクとガス事業者用のマイクロ回線のアンテナ、ちょっと離れた位置に携帯電話事業者のマイクロ鉄塔と、この付近ではマイクロ回線銀座になっていますし、駅の方には中層建築物が多数ありますが、この様なロケーションではるか彼方の衛星と通信をしているのにはちょっと感動しました。

撮影 2003.04.29 10:45

背後にカセグレン追加 立川駅周辺を歩く機会がありましたので電話局付近も見て見ました。鉄塔に搭載されているオフセットなどはだいぶ減ってしまいましたが、4回反射収束ビームアンテナの後方にカセグレンアンテナが増設されていました。相変わらず道路から見難い位置にありますが、放射器と副反射鏡は良く見えます。

撮影 2009.12.23 13:10


追記 2003.03.12(君津)
追記 2003.05.12(立川)
追記 2009.12.24(立川)写真追加  文章内のリンク先がなくなっていたので削除、文章一部修正・訂正


ひとつもどります