送信所全景 多摩川河口まであと数キロの右岸(神奈川県川崎市)にあるアール・エフ・ラジオ日本の送信所です。河川敷に設置された紅白の鉄塔、7段3方に支線がある中波送信空中線で良く見かける型式のものでした。


支線に注目してみました 7段3方に展張されている支線に規則正しく碍子が入っているのですが、1本だけ不規則になっています。左図の「←」で示した碍子の位置から上側は他の2本と同じ間隔で入っていましたが、下側には入っていなく末端は函に接続されていました。この支線の方向は南西方向、この位置(幸区の河川敷)から見ると横浜市方向になります。

 アール・エフ・ラジオ日本は神奈川県の県域放送のため、送信所が県の端っこに位置しながらも放送対象地域内の受信可能世帯数を最大限とすべく指向性空中線としています(逆に考えれば放送対象地域以外へのスピルオーバーを抑える必要も生じますが…)。

 一般に中波送信アンテナの水平指向性は通常無指向性ですが、放送区域内へ向けて送信するため、あるいは放送区域外の同一周波数の局との干渉を回避するために指向性を持たせることがあり、その方法として2素子指向性アンテナを用いることが挙げられます。この2素子双方に給電するタイプ、一方を無給電したタイプがあります。この局は2素子のうち無給電素子を支線で構成している様です。

 一方、アンテナ近傍に鉄線(鉄塔の支線など)があると指向性などの電気的特性が意図しないものになることになりますので、これを回避すべく概ね0.1波長程度の間隔で碍子を挿入しています。これは中波送信アンテナの支線に限らず、他の帯域の空中線の支線にも当てはまります。アマチュア局や空中線自体が小型になるVHF帯以上の局では碍子を必要としないグラスファイバー支線を利用する施工が一般的の様です。


整合函 ダウンリード(無給電素子)の末端には無給電素子に誘起される電流を調整するため整合函が接続されています。この整合函に接続されているのは7段支線のうち一番上段のもので、それ以外の支線はアンカーに直結(碍子絶縁なし)となっています。


ダウンリード以外の支線 ダウンリード以外の支線には等間隔で碍子が挿入されており、支線による特性乱れを防いでいます。左図は7段支線のうち一番上段の碍子(システム)です。他の中波送信所でもよく見かけるタイプで、碍子を跨いでコイルとスパークギャップがそれぞれ接続されており、高周波成分を碍子で絶縁しつつ低周波〜直流分をコイルで、雷サージの様なスパイク状のものをギャップで放電させ、碍子の寿命を延ばしています。


給電部 河川敷に設置してあるため基部接地型の空中線ですが給電点は見上げる位置にあります。主アンテナは紅白の鉄塔、それへ給電線(というか、パイプ状のもの)が碍子から鉄塔に向かって走っています。基部碍子で絶縁された鉄塔にボルトで接続され主アンテナ及びダウンリードを励振し神奈川県域に向かって送信しています。

 画面左に大きなリング(知恵の輪みたいなもの)が設置されています。高い鉄塔ですので航空障害灯も設置され、この障害灯への電源がオースチントランスを経由しています。このトランスが送信アンテナへの高周波電力が障害灯への電源を経由して接地されてしまうのを阻止しています。


銀球 位置を変えて基部碍子とスパークギャップを観察しました。支線の碍子に設置してあったギャップより二回りも大きいギャップで雷サージを放電させます。これにより送信機等の破壊を防いでいます。


撮影:2008.12.27 お昼すぎ
初稿:2009.05.06
追記・訂正:2009.05.09


参考資料:
(1)放送アンテナと電波伝搬(中波送信アンテナの章) 日本放送協会編
(2)電波関係告示集 告示660号「放送普及基本計画」 告示661号「放送用周波数使用計画」


ひとつもどります