鉄塔全景 左図は(JR飯田線)伊那市駅東側にある伊那公園からさらに1キロほど東に設置されている信越放送伊那放送局です。ここに行った際、信越放送の送信所も市内にあると地図で確認していましたが、行けず終いでした。伊那市再訪の機会がありましたので天竜川を挟んでNHKと反対側にあるSBCを見てきました。


局舎・局名 周辺はやや建物が多い、市街地の様相です。送信機等収納の局舎は平屋一戸建てでした。正面に鉄扉が1枚、その脇に局名が表示してありました。鉄塔は局舎脇のコンクリート基台に搭載され、碍子の上側に給電点を設けた基部絶縁形でした。


局舎・局名ロゴ 左図はバス通り側から局舎を見たものです。屋根が斜めになっているのは降雪対策でしょうか?


給電部 鉄塔の基部です。基部絶縁形の特徴である絶縁碍子・銀玉(スパークギャップ)・オースチントランスが良く見えます。ここのオースチントランスは知恵の輪形状でなく、地上側が四角枠・鉄塔側が輪っかとなっていました。

 紅白の鉄塔は6段3方支線を有する派手派手しいものですが、その鉄塔に中波放送波を供給する給電線は意外に地味で、斜め屋根の局舎の壁にぽつりとあるお椀状の碍子から太めのワイヤーがひょろりと張られているだけです。


頂冠 左図は塔頂です。基部絶縁形のアンテナは0.25λの長さが必要になります。この局は1,098kHz(λ≒273m)で送信していますので70mほどとなり目測そのくらいですが、鉄塔の電気的長さを延長するための頂部負荷である頂冠が設置されています。この局が該当するかは不詳ですがアンチフェージングアンテナとして動作させる場合は0.53λの長さ(約153m)が必要になり、これを電気的に得るためには頂冠が必要になります。

 中波放送のE層反射波によるフェージングは送信所から100kmほど離れた地域で問題になることがあります。この局の出力は100Wとありますので100km離れた地域に影響は出るかは不詳ですが…しかしながら北側100km弱の位置でSBC長野、南側50km弱の位置でSBC飯田が同じ周波数で送信していますので可能な限り高角度放射を抑える必要があるのでしょうか?ちなみに0.25λでは仰角60度方向への放射がかなり大きな値(E層反射波の影響が最も出るそう)になっています。

 頂冠は鉄塔に直付けされて(鉄塔と一体化して)いるものばかりと思っていたのですが、左図をよくよく見ると頂冠フレームの一部が棒状碍子で構成され、鉄塔と電気的に直接接続されている部分と絶縁されている部分で構成され、単純に輪っかや籠になっていないものがある、ということが観察できました。


鏡面のイメージ 基部絶縁形アンテナは大地を導体とみなし、地上に建っている鉄塔部分と同じ長さのものが地下にあるものと考えることができます(鏡像の原理)。このため鉄塔の電流・電圧分布など、電気的特性は半波長ダイポールアンテナとして検討することが可能です。

 一方、動作する部分の半分が地下にあると考えられることから、ダイポールアンテナの半分のエレメントに相当する電気抵抗、つまり接地抵抗を可能な限り低くしないと効率良く動作してくれないことになります(この種のアンテナが河川の近傍に代表される、いわゆる大地導電率の良好な場所に設置される所以です)。


TTLアンテナ 中継波を受信する、VHF帯の5素子八木宇田アンテナです。放射器の部分がプレートの様になっていました。折り返しダイポールにカバーをかけたものでしょうか?画面奥に見える冠雪した木曽山脈を背景に伊那市の北、天竜川の源である諏訪湖の先、美ヶ原方へ指向しています。



SBC伊那 1,098kHz(100W)

撮影 2009年4月29日 10時頃
初稿 2009年5月15日
訂正 2017年2月1日 基部接地形 → 基部絶縁形 (長期間放置で申し訳ありませんでした。)

ひとつもどります