キャベツ畑の向こう 千葉県の東端、銚子は無線電信発祥の地ということです。太平洋に突き出した地形ゆえ、海上向け通信の送受信所が設置されていたものと思います。それに加え近隣に新東京国際空港などもあることから空路の標識(無線航行業務局)も設置されていました。無線電信局は閉局されてしまいましたが、航空機向けの無線局はこの日も黙々と電波を送信していたと思います。以前見た超短波全方向式無線標識(鵡川町)や千歳の局と異なり(尤もNRTの関連施設でしょうから)警備の方がいらっしゃいました。このため遠巻きにキャベツ畑の向こうに見る構図となってしまいました。

 銚子にある局は電波関係告示集航空無線航行業務に使用する電波の型式及び周波数等によるとVORTACによる無線航行業務とあり、標識符号はCVCとなっています。鵡川や千歳ではVOR/DEMでしたが、ここはVORとTACAN(TACtical Air Navigation system)でここから見た方位と距離を航空機に与えています。VORは右側のアルホードアンテナ、TACANは左端の給水タンクの様なもので、その中に中央静止アンテナ内側反射器外側導波器が置かれているとのことです(*)。

 DEM同様、TACANも962〜1,213MHzの垂直偏波を使用し、航空機からの質問信号に対する地上施設からの応答信号を受信してその往復時間から距離を測定します。それに加え、複数の導波器があることから地上応答電波が回転指向性を有するので方位の測定も可能になります。


テレビ中継所 上図を見た状態で右側後方に振り向くとテレビ中継所が見えます。これは森の向こうに見えている構図になっていますが下の方はキャベツ畑でした。鉄塔が2基ありますが、右側の方はキャンデラブラ方式というアンテナの設置方法がとってあります。

 この方法はテレビ送信アンテナを1本の鉄塔で複数設置する場合に、お互いの水平指向性に及ぼす影響を極力抑えるためにアンテナの離隔距離を得るためのものです。昭和39(1964)年にこの地で国内初デビューとのことです(**)。キャンデラブラ方式の鉄塔において、片方が日本放送協会(2波)、片方が在京民放(5波)の送信アンテナとなっています。左側に普通の鉄塔があります。これは後発の千葉テレビ、NHK−FM、Bay-FMの中継局です。

撮影:2006.05.02 10時頃

テレビ中継所_下から 送信所は海抜50mちょいの台地に載っているので下から見上げることもできます。キャンデラブラ方式の鉄塔と普通の鉄塔の間隔も十分に開いています。

撮影:2006.05.02 10時40分頃

参考文献:
・アンテナ工学ハンドブック(電子情報通信学会;1992.12.30 第1版第7刷) 実用アンテナとそのシステム 航行援助用アンテナ (*)
・写真で学ぶアンテナ 清水保定・著(電気通信振興会;2002.05.27 初版第1刷) 放送用アンテナ (**)


銚子はキャベツの生産もさかんだそうです。


初稿:2006.05.18
追記:2006.05.21(写真追加、文章一部修正)

ひとつもどります