ニッポン放送の演奏所はお台場ですが、送信所は東京湾を挟んだ対岸の木更津市の郊外にあります。館山道やアクアライン連絡道路からその勇姿が見え、開けた場所に鉄塔がすらりと建っています。この写真は1989年撮影の古いものですが、館山道から見た限りでは然程変わっていない様に見えます。送信所の雰囲気としては札幌(江別)で観察した北海道放送、札幌テレビ放送の各送信所と同じ様な鉄塔です。またこの写真では見えませんがすぐ近くを川が流れているのも共通項です。送信出力は国内民放最大の100kWとなっています。これだけの出力ですから木造の実家ではとても良く入感し、東北放送(1260kHz;当時)の受信報告書を書くのに難儀しました。でも1250kHzの外国の放送はちょっとかぶってきてましたが…

 鉄塔の高さはフェーディング防止形アンテナとすれば0.53λで約128mとなりますが、見かけそれくらいの高さある様です。ただ、奥の方にあるもう一つの鉄塔が気になります。遠近法の影響で低く見えていそうですが、目測それほど離れていません。高さ的には手前の鉄塔の半分くらいだった様に思えます。手元にある資料では指向性アンテナとも考えられそうです。木更津市は関東平野全体からみると端っこになるので、東京・神奈川・埼玉方面をメインエリアとするならばそっち方面に指向性を持たした方が得策と思えるのですが…しかしながら周波数一覧表等を見ても指向性アンテナを示すDのマークは付いていないし…局舎の左手にある銀色の鉄塔にはパラボラが載っていたと思います。たぶん対岸の有楽町(当時)演奏所からの回線と思われます。

 中波放送の放送区域は電界強度が0.25mV/m以上と定められている様です。しかしながら都市部ではノイズ(都市雑音)に打ち勝つため、これより高い電界強度が指定されています。この条文を見ると千葉県市原市は0.25mV/m以上でいいそうですが、千葉市では2mV/m以上となっています。また東京23区のうち練馬区を除く部分は10mV/m以上(練馬区は5mV/m以上)となっています。今居る前に居た北海道千歳市は市原市同様0.25mV/m以上でいいそうです。しかしながらこの郵政省告示(下参照)は昭和39年に制定されたあと昭和47年に最終改正されたあと33年間もそのままです。

(追記)
 ニッポン放送の演奏所は1997年3月24日から2004年9月6日まで「お台場」にありました。その後有楽町駅の近くにもどってきています。本稿は2002年4月に作成したため上記の様になっています。なお、木更津の送信所は1971年6月から運用されています。


 概ね送信所などは危険防止のため容易に立入りができない様に柵で囲ってあります。中には正面だけ申し訳程度に鎖の通せんぼがしてあるだけで、そこからものの10mも離れた場所には既に柵というものがない…という場所もあります(某送信所とか)。しかしながら大電力送信設備の大半のエネルギーが放出される場所は興味本位で近寄る(近寄らせる)わけにはいかないので上記の送信所も押さえるところは押さえてありました。

 さてこのニッポン放送、送信所をぐるりとフェンスで囲ってあり、更にフェンスの上に有刺鉄線が這わせてありますのでホントに厳重です(それくらい必要でしょう、100kWですから…)。そんな中、この様な看板があるのでした。たぬき…ですよね。たぬきといえば木更津にある證誠寺、これから引っ張ってきたのか、或いはニッポン放送の「ポン」から引っ張ってきたのかはわかりませんが、愛嬌のある看板だったので送信アンテナよりこっちを先に撮ってしまいました。


 上のアンテナ全景からちょっと引いて小櫃川がフレームに入る様に撮影して見ました。この時(2001.01.04 10:30)は風は多少強かったけど快晴でしたので青空に紅白の鉄塔がとてもきれいに見えました(アンテナが若干右に傾いていますがこれはカメラが傾いているだけです)。



手元にある資料とあるのは下記の書籍を指します。
アンテナ工学、遠藤敬二・佐藤源貞・永井淳 共著、総合電子出版社 1997年7月 第7版
(参照個所 第4章 中波送信アンテナ)

郵政省告示(総務省告示)とあるのは下記のことです。
標準放送を行う放送局の放送区域(放送局の開設の根本的基準第2条から呼ばれる)
昭和39年1月8日郵政省告示第5号、最終改正昭和47年5月1日郵政省告示第359号
(電波関係告示集 平成19年2月8日 追録番号27)

電波法令(放送局の開設の根本的基準第2条11項の1)では下表の様な範囲になってました(電波法令集 平成18年12月11日 追録番号30)。

区域
電界強度[mV/m]
高雑音区域10以上 50以下
中雑音区域2以上 10未満
低雑音区域0.25以上 2未満

・千歳は低雑音区域なんですねぇ…(←電波環境的に静かってこと??)羽村市もね。
・この中でブランケット・エリアという定義があり、電界強度が5V/m以上の区域をいう…とあります。その局しか聞こえなくてもオッケーのエリアですが、電界強度が5V/mって…すごいね。


初稿 2002年4月20日
訂正 2007年9月20日(法令集の追録番号更新、その他誤記等訂正)

ひとつもどります