about old hanger

●なぜ「ハンガー」なのか? -1-
ハンガー収集にいたるまでの道のり……

自分で集めていて言うのもなんですが、なぜ「ハンガー」なんでしょうか。世の中に、もっと価値のあコレクタブルな品物や誰もが魅力的に思う品物はいろいろあります。そのなかで、なぜあえて「ハンガー」だったのか?
少なくとも私が直感的に魅力を感じてしまったがため、こんなふうになってしまったのですが。このへんをゆっくり、ちょっと冷静に解き明かしておこうと思います。(いつ解き明かされるかわかりませんが……)

そこでまず、私がハンガー収集にいたるまでの道のりを振り返っておきましょう。

★収集前夜

ある衣料品店のコンサルティングを依頼されたときでした。
私には、“カラーコンサルタント”なるインチキくさい肩書きがあります。その店のオーナーから、店舗の色を見直したいという依頼をうけ、相談に乗ることにしました。

店を見にゆくと、ただ内装や什器の色を変えればいいというだけの問題ではなさそうです。店舗のレイアウトや什器自体に手を入れ、なおかつ商品構成も見直したほうがよさそうでした。そこで、私一人では手に余るので、マーケティングの専門家を加えて、経費をなるべくかけないでリニューアルする計画を練ることにしました。内装を変えるとなるとけっこうお金がかかるので、仮設の壁や什器を工夫することで全体の雰囲気を一気に変えます。

これがそのプランのひとつ

衣料品店ですから当然商品の多くは、ハンガーにかけて陳列されます。そのとき、ハンガーの役割の重さを再認識し、どんなハンガーがいいか調べてみました。……そのときです……

「あ、まずい……」

元来、収集癖のある私には、“手を出してはいけないもの”リストがあります。ひとつ手に入れたら、いろいろと集めずにはいられなくなりそうなもののリストです。
業務用のハンガーを調べていると実にいろいろなデザインがあります。収集魂がうずきました。が、そこは理性で押さえ、そのとき以来、ハンガーは、私の“手を出してはいけないもの”リストに加わることになました。

★夜明け前

“手を出してはいけないもの”リストに加わり、1年余り過ぎます。
私は、あるファッション専門学校で講師もしています。その学校で「着る」ことをテーマにしたゼミがあり、私も講師の一人として参加していました。
そのゼミには何人かの講師が立ち代りレクチャーをしながら「着る」ことをめぐっていたのですが、ある講師が“ハンガー”に触れました。そして、彼は、『CINTRES HANGERS』というあるハンガーコレクターのハンガー写真集を紹介しました。(その後この写真集は、ハンガリスト(何だそれは?)のバイブルとして私の座右に置かれることになります。)


'CINTRES HANGERS'
Daniel Rozensztroch
(Le Passage Paris-New York Editions, 2002)


「ああ、まずい……」

やっぱり、集めている人はいる。
しばらくハンガーのことなど忘れていた私は、ハンガーがコレクションの対象となることを思い出してしまいました。

★夜明け

それからしばらくして、友人数名と横浜の赤レンガに行きました。赤レンガにはいろいろなお店が入っています。目的は別にあったのですが、せっかく来たのだからと、くまなく見て回っていました。
一軒のアンティークショップがありました。何気なく店内をぶらついていたとき、「それ」(写真→)を発見してしまったわけです。

「……まずい……」

私は、それを手に取り、そのデザインや古びたワイヤーの得も言われぬ味わいの深さに魅了されてしまいます。しかし、そこは大人。理性で押しとどめます。若干高価だったこともあり、「見るだけ、見るだけ」となんとか振り切り、その日は終わりました……しかし。

しかし。

その数日後、私は「それ」をまんまと手にしていました……

こうして堰は切れてしまいました。……その後は、怒涛のごとく。

★唯一の救い(???)

最初に手にしたのが「アンティーク」だったこと。
収集の対象に「アンティーク」というリミッターをつけることができました。
それまで、アンティークに興味があったわけではありません。正直、今でもアンティークに興味があるとはいえません……(オークションなどを通じてハンガーを譲ってくださったアンティークを愛好する皆さん、ごめんなさい。私はただのハンガー好きでした……。 ツ?でも、アンティークのよさは私なりに感じているつもりなので許してください……)
今、新品で流通しているものに手を出したら、きっと大変なことになりました。もっともアンティークだったからこそ敏感に反応したのかも知れないのですが。

〜続く〜