about old hanger

●ハンガーのジレンマ

洋服を着る人なら、ハンガーを使ったことのない人はいないでしょう。また、ハンガーを一本も持っていない人もいないでしょう。洋服をクリーニングに出せば、あたりまえのようにハンガーがついてきます。それはごく日常的な道具のひとつです。
しかし、ハンガーに特別こだわる人もそれほど多くありません(かく言う私自身も日常に使用するハンガーにこだわりがあるわけではありません)。毎日使っているものでありながら、「モノ」としての存在はとても希薄です。

ハンガーの存在価値は衣服を掛ける機能にあります。ところがその機能が存分に発揮されているときにはモノとしての存在が(衣服に隠れて)消えてしまいます。そして衣服がはずされたとき、すなわちハンガーとしての機能を中断したとき、モノとしての存在が明らかになります。

“使っているとき使わないで、使わないとき使うもの”

それがハンガーのジレンマです。

ハンガーの命は、衣服を掛け、衣服の形状が崩れぬよう維持することであり、その機能が満たさせない限り、ハンガー自体の形や材質、色に意味はありません。(このサイトのように)機能の高さを無視したハンガーの形態に関心を寄せるのは、ある意味とてもばかばかしいことです。