出張で休診?

「今日は,○○先生は出張でお休みです。」

ところで,出張はどこに出かけているのか?と疑問を持ちませんか?

実は,その大半が『学会』と呼ばれる,特定のテーマを持った輩が集まる集会の出席のためなのです。一般の人は「学会出席のために…云々」と言われると,「大事な仕事のためだからしょうがない」と思っていることでしょう。けれど,本当に大事な仕事なのでしょうか?

学会と呼ばれる集団や学術集会は,僕も確認しきれないくらいに沢山あります。(ちなみにインターネット上で検索してみて下さい。医学学会だけでも大変なものです!)

ところで患者のみなさんは,自分の主治医が,どんな専門か,どんな学会に所属しているかを知っていますか?主治医の専門くらいは,知っているかもしれませんが,所属学会は流石に聞くのがためらわれることでしょう。僕自身も聞かれても困ります。なんたって,自分で覚えていないし,学会年会費なんか,そのままというのが多いですもの…。

では,診療を休診してまでする学会出席の重要性って何なのでしょうか?もし,医者に聞く事が可能な方がいたら聞いてみて下さい。ちゃんと答える人なら,おそらく次のように答えると思います。(飲み屋で聞かれたらきっと,「観光がてらさ…」が多いかな?)

「『専門的あるいは最新の医療の知見を求めて…』それと…他には,『自己の医療技術あるいは研究活動のアピール…』」

が一般的な答えでしょう。そしてこれは全く真実であると思います。 「専門的あるいは最新の…」は,どの学会にも当てはまり,これなくしては学会そのものの存在価値自体ありません。 「研究活動のアピール…」というのは,医者同士がアピールするように聞こえますが,実は全く違います。所属している医局(所属大学)へのアピールに他なりません。だって,医者同士がアピールするなら,「あんたのとこではこんなことやってるそうだが,うちではこんなすごいことやってんだぞー!」とやっていたらそのうち喧嘩になります。ついでなら,

一般の人も交えてやり合った方がいいでしょうね。そもそも医者同士のアピールなんて無意味なんでしょうけど…。(実際こんな学会があったらいいなあと思います。一部後述しますが,現実的にはこうゆうのはいろいろ問題があるのです!)

これだけでは個人的なものでしかなく,決して患者にも医療にも還元されるものとはならないですよね。だってあなた!学会で聞いてきたからこれすぐやってみよう!なんていう医者をあなたは信用できますか?

僕なら,「チョット待ってよ」と言ってしまいます。たとえ「私は名医なんだから大丈夫!」なんて言われたとしても…。

では患者サイドからみてどうでしょうか?診療休診に伴い,普段よりも外来診療時間が延長されたり,大学からの医者による代診(このこと自体変だと思うけど…)となってしまうのは,どう考えてみても患者からしたら,文句の一つも言いたくなると思います。けれど,心やさしい患者さん達は,「大事なお仕事だから…」と許してくれているようです。

大学はまだ,医者の数がある程度いますからよいでしょう。地方での地域医療を担っている関連病院の医師達は,理由が何であろうと,学会出席を遠慮せざる得ない状況であることを考慮すると,医療の現場だけではなく,学会自体の存在意義を検討し直して欲しいと思います。あまりにも無駄な学会や研究会が多いんじゃあないのでしょうか?

一般的に考えれば,存在意義のない学会や研究会は自然淘汰されるような気がします。けれども現実にはそうではありません。 最近でも,また学会やら研究会が新しく創設されています。名目は,「整形外科医療技術の進歩…」。笑わせるんじゃあありません!それじゃあ,これまでの研究会やら学会は一体何だったの?と聞きたくなります。しかも同じ日に他の研究会と同時開催するなんて全くわけがわかりません!(個人的感情がかなり入っていますが,以前から同様なことが続いています。変なの!)それでもって世話人や役員の顔ぶれは,これまでの研究会や学会の人達とどこが変わっているんでしょうか?第一,この北海道にいくつもの学会や研究会を開催する必要があるくらい,整形外科医がいるとでもおっしゃるんですか?

大学の教授が新しくなると,学会や研究会が少なくとも一つ増えるという噂があります。そして,この北海道でもそれは真実なようです。そして,同様に誰かが偉くなるとまた一つ…。

自然淘汰どころか,まるで医療に取り憑いた悪性腫瘍そのものです!費用の無駄!時間の無駄!挙句の果てに,「発表演題が少ないから,大学から出して欲しい…」だとぉ!じゃあそんなの止めればいいじゃあない!面子と主導権のために,このようなことが続いているのに過ぎないのではないでしょうかねぇ…。だから,免税の対象にならないのもうなづけます。この21世紀,本当に実(みのり)あるものに変わっていって欲しいと思っています。

最近,一般者を対象とした市民講座なるものを学会で開催しているのをご存じでしょうか?名目上,「医療そのものの理解と啓蒙を目的として,一般者に公開すること」に近い内容となっていると思います。

でも,これって変じゃあありませんか?学会って公開されているものじゃあないの?誰でも参加できるものじゃあないの?実際殆どの学会や研究会には,参加資格というのがあり,一般者は入会できません。つまり,学会や研究会は,閉鎖的サークルなのです。参加くらいは自由でもいいと思うんですけど…多分駄目でしょう。

「アピールする意味」を御理解して頂けると思います。誰のための学会なのかを!

大げさに言えば,うまくいっていない患者の治療をうまくいったようにみせかけて発表しても,それは間違っている!と学会場で討論しても,誰もペナルティーを科せられることはないのです。医学会も考古学会も何ら変わりありません。ずーっと嘘ついていても,バレなくてある程度よくなれば,いい治療法として教科書に載ってしまうくらいですから!(例えですよ!)

こんなことばかり書いていると,「お前は学会に出席していないのか?」と言われそうです。

ここ数年わずかの学会しか出席していません。本当は貧乏だから…と噂されていますが!

自分一人がどうあがいてみても,こういうことは改善されないのでしょう。

もし,このページを大学の教授や偉い先生方がご覧になっていたら,一度検討してもらえないでしょうか?

ちなみに,うちの松野教授には,直接意見しています!ただし,酔っ払いながらですけど…。(俺そのうちクビになるんじゃないだろうか?)

みなさん!主治医が出張でいないという知らせを聞いたら,「私より大事なお仕事で出張ですか?」と意地悪く聞いてみて下さい。主治医は内心ドキッとして,今度から少し考え直そうって思う先生が多いかも知れません!